矛盾 ページ47
「俺、Aさんの優しい所が大好きなんです」
「うん」
「好きで、大好きで、これからもずっとずっと…隣で笑っていてほしくて」
「…うん」
「きなこと一緒に、Aさんの耳になろうって、決意…っ、して…プロポーズ、しよう…って、思ってたんです」
「……うん」
声が震えてる。何か上手く言葉が紡げなくて途切れ途切れになってしまった。でも三宅さんは急かす事なく聞いてくれた。
ボロボロと涙を零す俺の背中を摩ってくれた。この人は凄い優しい人だなぁ。
「でももうAさんは、いなくて…！」
「…うん、彼女はもうこの世にいない」
「俺っ、まだAさんの事、好き、なんです。Aさん以外の人、を…これから…、好きになる、なんて…無理、なんです…っ」
Aさんは俺が幸せになる事を望んでくれていた。Aさんではない、誰か別の人と。でもそんなの俺は嫌だ。
俺はAさんじゃなきゃダメなんだ。Aさんを忘れる事なんて、できないよ。
「無理に忘れる必要はないよ」
「え……？」
「先生との恋人としての思い出は、この世で君しか知らないんだ。先生を忘れるという事は先生との思い出も忘れるという事だよ」
「っ、」
「だから無理に忘れる必要はないと俺は思うし、いつか“そういえばあの人とこんな事したなぁ”って思う時が来るさ」
君が先生との思い出を忘れてしまったら先生が天国で泣いちゃうよ、と三宅さんは笑って言った。
「先生は君に自分の事を忘れて新しく恋をしてほしいと思ってるかもしれないけどさ、そんなのは君の自由だ」
「俺の、自由…」
「……俺がこんな事を言うのはおかしいけどさ、少しでもいいから先生との思い出を覚えていてくれる？」
「え？」
「君がずっと先生を覚えていてくれるという事は……多分だけど、先生の願いだから」
「……」
「はは、かなり矛盾してるけどね。でも多分そうだよ」
「そう、でしょうか」
「うん」
Aさん、俺…Aさんの事覚えてていい？三宅さんの言う通り、Aさんを恋人として知ってるのはこの世で俺だけなんだ。だから、俺はAさんを忘れたくないよ。
頭の中を整理して、深呼吸をした。よし、涙は止まった。心の整理も終わった。
「三宅さん」
「ん？」
「色々ありがとうございました」
「あぁ、いいのいいの。むしろ余計なお節介だったかな」
「いえ、今三宅さんと話さなかったら多分俺ダメなままでした」
話してよかったと心から思う。
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Ria(プロフ) - やばいです…感動ものです……ｸﾞｽｯ、泣いちゃいました…。素敵な作品をありがとうございます…！！ (2020年3月22日 21時) (
レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - 善処さん» ありがとうございます！めっちゃ嬉しいです！(*≧∀≦*) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» やっぱりそう思いますよね…分かります。 (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - danchanさん» 三宅さんが手話ができると知ったので、これは出すしかないと思い、出させていただきました！ (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ゆりりんさん» 作者も書いてて泣きそうになってました…(´；ω；`) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀧 | 作成日時：2019年8月9日 0時
