また君の隣にいたい【Fischer’s】

日記 ページ43

別れたあの日の日記を読んでみようと鼻を啜ってからページを開いた。確か6月の……あった、ここだ。



「ん？」



何か書いた跡を消すように黒のボールペンでぐしゃぐしゃに塗り潰されて消されてた。あ、でも頑張れば読めるか？透かせば読めるかも。


そう思って蛍光灯にそのページだけ透かして見てみた。お、読める読め…る……。



「……何だよ、これ。Aさんのバカ」



思わず悪態を吐いてしまった。だってそう言わずにはいられなかったんだ。



《嘘吐いてごめんなさい。あの時本当は抱き締めてほしかった》



だって、こんなの書かれてたら、さ。バカって言いたくもなるよ。何だよ。Aさんの嘘吐き。


でも、Aさんに嘘を吐かせてしまったのは俺だ。俺のバカ。あぁクソ…っ、俺がAさんの異変に気付けたら、こうならなかったのに……！



「……俺の事ばっか」



日記を遡って読んでみると俺と出逢った日以降は俺の事ばっかり書かれている。Aさんがどれだけ俺の事好きでいてくれたのかよく分かる。でも別れた日以降、Aさんが亡くなった日までは真っ白な日記。まるで日記に書く事なんて何もないつまらない日だった、みたいな。


この日記にはAさんの俺への想いが全部詰まってる。メンバーの事も時々書かれてる。皆優しくて温かくて大好きな人達だって。シルク達喜びそうだ。



「本当は直接、そういうの聞きたかったけど」



もうAさんはこの世にいない。聞きたくても聞けない。そうだ、夢でなら会えるかな。これまで何度もAさんの夢を見てきたんだ。夢でしかAさんに会えないって嫌だなぁ。


ねぇAさん。Aさんは俺と出逢って、付き合って幸せだったかな。俺は幸せだったよ。本当はもっともっと一緒にいたかったけどね。


Aさん、俺はAさんが天国でお父さんとお母さんに会える事を願ってるよ。俺の事、空の上から見守ってくれると嬉しいなぁ。Aさんに見守ってくれてると思うとAさんがいない世界でも頑張って生きていけそうだから。

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