整理 ページ41
「ここか……」
俺は遺品の整理のためにAさんの住んでるマンションを訪れた。自宅を特定されてしまったため、俺と付き合ってた頃のマンションから引っ越したんだと赤坂さんから聞いた。
赤坂さんはAさんの事で他にやる事がまだたくさんあるからと話が終わったらどこかへ行ってしまった。別れ際に遺品整理を頼まれた。住所を教えてもらって鍵も貰った。でも今マンションの前にいるのは俺1人だけ。
皆は俺らがいない方がいいだろう、と言って帰った。うん、まあ……遺品の整理してたらまた泣きそうだし、ありがたかった。
マンションの中に入って、Aさんの部屋番号と表札を確認してから鍵を鍵穴に差し込んだ。ドアを開けて一歩中に入ればまだ新しい家の匂いがした。赤坂さんはAさんがここに引っ越して間もないって言ってたな。
「お邪魔します」
相変わらず綺麗な部屋だった。パッと見た感じは前の家とそう変わらない。部屋の隅の方にある犬のトイレとか見てそういえばきなこはどうしたんだろうと思う。後で赤坂さんに聞いてみよう。きなこは事故に巻き込まれてなければいいな。
「……あ」
チェストの上に俺と撮った写真が入った写真立てが飾ってあった。マサイがAさんの誕生日プレゼントにと渡してたガラスでできた写真立て。ここに引っ越してからも飾ってくれてたんだ。
部屋を見渡せば、隅にダンボールが一箱置かれてた。引っ越ししてからまだ開けてないやつかな。そのダンボールを何気なく見るとAさんの字で【M】と書かれてた。M?何のMだろう。
中身が気になったから開けてみる事にした。遺品整理の名目で来てるんだし、いいよね。ペン立てに入ってたカッターを使ってダンボールを蓋してるガムテープを切った。中を覗いて手が止まる。
「っ、これ……」
中に入っていたのは前のAさんの家に置きっぱなしにしていた俺の私物だった。あの別れ話の後、俺はAさんの家の合鍵を返しちゃったし、何よりそれ以降会わなかったからてっきり捨てられたと思ってた。捨てられて困る物はなかったから別にいいと思ってた、んだけど……。
「何で、捨てなかったの……?」
着替えとかは丁寧に畳まれているし、お揃いのマグカップは割れないように梱包材にきちんと包まれてる。他にも俺が置いていった物が全部ダンボールの中に綺麗に仕舞われていた。
まるで大事な思い出として残しておいてるかのように。
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Ria(プロフ) - やばいです…感動ものです……グスッ、泣いちゃいました…。素敵な作品をありがとうございます…!! (2020年3月22日 21時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - 善処さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» やっぱりそう思いますよね…分かります。 (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - danchanさん» 三宅さんが手話ができると知ったので、これは出すしかないと思い、出させていただきました! (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ゆりりんさん» 作者も書いてて泣きそうになってました…(´;ω;`) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年8月9日 0時