特別 ページ3
Aさんのハンバーグは美味しく頂きました。いや本当美味しかった。また食べたい。更にAさんの手作りケーキも美味しかった。お店で食べるケーキみたい。
[ケーキも美味しいよ]
[よかった。誰かに手作りの物食べてもらうの久し振りだったから不安だったんだ]
お菓子作りが趣味なんだって。Aさんいいお母さんになりそう。まただ。最近本当に将来の事によく結び付けちゃうんだよなぁ……。
Aさんにも彼女が描く将来に、その隣に俺がいるか聞いてみたいけどちょっと怖いんだ。俺とは将来の事考えてないとか言われたら立ち直れないし。まあAさんは優しいからそんな言い方はしないだろうけど。
美味しそうにケーキを頬張るAさんを見てそう思う。あぁもう、誕生日の時までそんなネガティヴになるのはやめよう。
そんな気持ちを払拭するために俺はAさんに向けて口を開けた。食べさせて、って事。伝わるかな?あ、伝わった。だって目を見開いて顔赤くしたから。すぐ分かるよ。
恥ずかしい気持ちが大半だったと思うんだけど、俺が今日誕生日だからか意を決した表情で恐る恐る口元に一口分のケーキをフォークで運んできた。やってみるもんだな。ラッキー!
差し出されたケーキを食べた。同じケーキの筈なのに自分で食べてたケーキよりめちゃくちゃ美味しく感じる。あー、幸せ。
[ありがとう]
[今日は誕生日だから特別]
[明日とかはダメなの?]
[恥ずかしいからダメ]
ちぇー。でもまあ今日してくれただけよかった。それから時々あーんしてもらいながらケーキを食べ終わった。今まで食べたケーキの中で一番美味しかった。そうAさんに伝えれば大袈裟だと笑った。本心なのに。
お皿を片付けようと立ち上がりかけたAさんの腕を掴んで引き止めた。そのまま腕を引っ張って抱き締める。Aさんがどうしたのかと俺の肩に手をついて顔を覗き込んできた。
だから俺は顔を近付けてその柔らかな唇に己のそれを重ね合わせた。二、三度繰り返して顔を離してみた。これ以上ないくらい真っ赤に染まってる。まだキスに慣れてないとこも可愛い。
「Aさん、好きだよ」
彼女には聞こえていなくてもそう言葉にするのが好きだったりする。もう一度抱き締めるとAさんも俺の背中に腕を回してくれた。
彼女を抱き締めてたから、彼女が何か言いたげに口を開きかけてた事なんて俺は気付かなかった。
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Ria(プロフ) - やばいです…感動ものです……グスッ、泣いちゃいました…。素敵な作品をありがとうございます…!! (2020年3月22日 21時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - 善処さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» やっぱりそう思いますよね…分かります。 (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - danchanさん» 三宅さんが手話ができると知ったので、これは出すしかないと思い、出させていただきました! (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ゆりりんさん» 作者も書いてて泣きそうになってました…(´;ω;`) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年8月9日 0時