邂逅 ページ1
暫く絵に目を奪われていたけどハッとして顔を上げた。俺の足元に飛んできたという事は、この絵の持ち主は近くにいる可能性が高い。
画用紙についた砂を丁寧に払い、辺りを見回した。視界に入る限りは誰もいない。画用紙が飛んできた方向に足を進めると1人の女性がオロオロしながら探し物をしているようだった。もしかしてあの人かな。
そう思った俺は女性に近付いて声を掛けた。すると反応したのは女性ではなく、女性の側に座っていたラブラドール・レトリバー。女性の膝辺りをタッチした。それに気付いた女性は初めて俺の方を見た。
「あの、これ……風で飛んできたんですけど、貴女のですか?」
俺がそう言ってから、女性は急いで持っていた鞄からスケッチブックを取り出して何かを書き始めた。書き終えたそれを俺に見せる。書いてある文字を見て目を見開いた。
《私は耳が聞こえません》
女性の側にいる犬をよく見ると“聴導犬”と書かれた服?を着ている。盲導犬が目の見えない人のためなら、聴導犬は耳が聞こえない人のためか。俺が読んだ事を察した女性はそのスケッチブックを俺に差し出した。ここまでされたら何をしてほしいのか俺でも分かる。スケッチブックを受け取って、さっき言ったことを文字に起こした。
《この絵はあなたのですか?》
スケッチブックを女性に見せたと同時に拾った画用紙を渡した。画用紙を見た女性の顔が分かりやすい程に輝く。そして何度も何度も頭を下げた。言葉がなくても、女性が俺に感謝を伝えているのがよく分かる。人間って言葉がなくても言いたい事って分かるもんだなぁ。
そうだ、絵について聞きたい。俺が拾ったのは満開の桜が描かれた絵だった。見た感じだと多分色鉛筆。でも色鉛筆で描かれたとは思えないくらい、リアルで、鮮明で、綺麗だった。
《その絵って今描いたものですか?》
書いた文を見せると女性は目をパチクリさせてから頷いた。凄いな、完成させるまでどれくらいの時間を掛けたんだろう。
《すごい上手ですね》
あれ、今の上から目線っぽい?マズったかも。どう書き直そうと悩んでいると女性が手を差し出した。スケッチブックを渡せって事かな?スケッチブックを返すと何かを書いて、見せてくれた。
《ありがとうございます。嬉しいです》
文だけ見ると素っ気なく思えるけど、目の前にいる女性の顔は真っ赤に染まっている。褒められ慣れてなさそうな感じが可愛いと思った。
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瀧(プロフ) - wwwさん» 作者もです笑 作者の願望が詰まった作品になっております笑笑 (2019年7月18日 22時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
www - ああ、こんな恋したい (2019年7月17日 18時) (レス) id: 423bf3fc22 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ひなさん» そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります(≧∀≦) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» ありがとうございます(*゚▽゚*) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - この小説好きです。投稿頑張ってください! (2019年7月4日 0時) (レス) id: 0d818dd5f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年7月1日 0時