俺、横尾さんになっちゃった！

another story…04 （Side-F） ページ25

「太輔、悪い！
ちょっと舞祭組皆で挨拶したい人がいてさ。
俺ら先に行ってるから、みつを起こしてやって」


「えっ、急に何？ちょっと困るんだけど」

「いいから！頼んだよ」

「おい渉っ。ちょっと待てって…」


地下駐にバスが着くと、渉は俺と北山を残し後のメンバーを連れてさっさとバスを降りてしまった。


舞祭組でって…。じゃあなんで玉まで？


いきなりの展開にテンパっていると


「じゃあ用事済んだら、警備員にでも声掛けてください」


ドライバーさんまでもがバスを降りて行ってしまった。


まじか…



通路を挟んだ隣のシートを見れば、北山はまだ窓に頭を凭せ掛け気持ち良さそうに寝息を立てている。


寝ている北山と二人きりとか…
困ったような嬉しいような？

あ…
もしかしてもういきなり俺の願い事、叶い始めてんの？
…なーんてね。



隣りに腰掛け、柔らかそうなほっぺたに人差し指を押し付けてみる。


「まじ熟睡してんだな」


なあ、北山…。
お前は今日誰のことを祈ったの？
あんなに一生懸命、誰を想ってた？



相手が起きないのをいいことに、反対のほっぺたを突いてみたり鼻を摘まんでみたり…ここぞとばかりに北山に触りまくってみる。
ホント、柔らかくて気持ちいい(笑)


でも本当に触れたいのは…




うわっ…やべやべっ
もう少しで寝込みを襲うところだった。
キスは、ちゃんと告白してO.K.を貰ってからじゃないと。

なんて…

それが出来てたらこんなに何年も拗らせてねーんだけど。



まだしばらくこの有難い状況を堪能したいところだが、あまり遅くなるのはマズい。

取りあえず起こそう。


「北山。きたやま」


再びツンツンしながら声を掛ければ、ようやくふるっと睫毛が震えた。


「着いたよ。北山、起きて」


少し開きかけの口元が乾いていたのか、真っ赤な舌がちょろりと出てきてその唇を舐めてる。


んがっ！やばい…


思わず悶絶しながらも、


「おい起きろ」


となるべく普通の声色で呼んでみれば、


「ふじあやぁ？」


なんて可愛い声出すし。

その上いきなり、


「ふじっ。ふじがやぁ〜」


なんて叫びながら抱き着いてくるし！


そこからは頭が真っ白になっちゃって、ところどころしかはっきり思い出せないんだけど…


俺の大好物の顔して


「好きだよ、藤ヶ谷」


と告られ、


「もう！藤ヶ谷も…俺のこと好き、だろ？」


と煽られ、



気付けば俺は…目の前の愛おしくて堪らない北山に夢中でキスしていたんだ。

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