俺、横尾さんになっちゃった！

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「ねぇ、ここの神社ってすごいんだって」


ようやく弁当を食べ終え箸を置いた藤ケ谷が、ふと思い出した様に口を開いた。

他の奴らはとっくに外へ出て行ってしまったので、部屋には俺ら二人だけ。

こうして二人で弁当をつつきながら仕事以外の他愛ない話が出来るなんて、どれだけぶりだろう。

こんな贅沢な時間…横尾さんにとっては当たり前なんだろうなぁ…。

目の前で屈託なく笑うその顔を眺めながら、少し寂しく思う。


「地元じゃあ知る人ぞ知る…っていう神社らしいよ。
あんまり有名になり過ぎると困るから、噂広めないようにしてるって…
さっきスタッフさんが言ってた」


「すごいって…どう凄いの？」

「願い事が必ず叶うんだって」


ほう！
まあ、確かに……
俺も願い事叶えてもらってる真っ最中だもんな(笑)


「そりゃすごいな。何のジャンルの神様？商売繁盛とか縁結びとか…」

「なんと縁結び！」


え？そうなの？
俺と横尾さんの願い事はちょっとそっちの方面ではなかったような気がするけど…
まぁいいか。


「じゃあ、お詣りに行こっか？」


「うん！」


んふふ、そんなに目をキラキラさせちゃって。
全く…さっきの般若はどこ行ったんだよ(笑)

藤ヶ谷のこんな顔を間近で見れるだけでもホント俺、幸せだわ。

神様ありがとう！






二人で肩を並べ、短い参道を歩く。

いつもの見上げるアングルではなくほぼ同じ高さで藤ヶ谷を見れるのが何だか新鮮で、つい吸い寄せられる様に見とれしまう。


「渉…ちょっと近いんだけど」

「えっ、あっごめんっ」


苦笑いしながら急にこっちを向いた藤ヶ谷と鼻先がぶつかりそうになり、慌てて一歩下がった。

やべ。心臓ばっくばく…


「渉さっきから変。何か言いたい事でもあんの？」


「いやその…。えと、太輔は何をお願いするのかなって」


「それ訊く？」


「へ？」


「縁結び、っていったら相手は決まってんじゃん(笑)」



あ、横尾さんはきっと藤ヶ谷の想い人のこと知ってんだな。
二人は親友だもんな…



「そ…だな。…叶うといいな」


「へへっ…頑張る。いつもありがとな♪」




　 ぎゃはははは

　
　 やたっ！俺の勝ち〜〜


　 おい、冷てぇっ！やめろぉ〜っ


　

突然、ヨーヨー釣りの屋台にたむろしている『俺』達の笑い声が大きく境内に響いた。


「あいつら…お子ちゃまだな」


立ち止まり声のする方を向いた藤ヶ谷の表情がやけに大人びていて、またバクバクと心臓が高鳴った。

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