王に全てを捧げた男の末路【三途春千夜】

私 ページ3

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そして時が経つにつれ、いつしかオレの中では“王が何よりも大切”という考えが芽生えていた。

かと言って決してAの事が大切じゃなくなった訳では無いし、Aがいないと生きていけないのも変わりはなかった。…いや、少しそれは嘘かもしれねぇ。オレはいつしかAがいないと“生きていけない”のではなくて、“多少生きづらい”程度になっていた。

そう、いつしかオレの世界の中心はAではなく王であるマイキーになっていた。だからオレは王を尊ぶ気持ちが軽く見られたくなくて、Aと付き合っていることは誰にも言わなかった。
きっとそんなオレにAは気づいていたし、その上で何も言わず普段通りに接していたのだろう。そしてそんなAをオレはあいも変わらず愛していた。


上には尊い王の存在もあって、隣には最愛の女もいる。順風満帆とはまさにこの事だった。
でも、そんなある日、どっちつかずのままのオレに天罰が下った。

───その日からオレの理想とする世界が少しずつ歪み出した。



ある日、マイキーが相談があると言ってオレを呼び出した。オレはマイキーに頼られたことが嬉しくてまさに天にも登る気分だった。…この後マイキーに言われた一言で途方もない地獄が始まるとは知らずに。


「三途、オレさ、オマエの幼馴染…Aに惚れたみてーだ。オマエら付き合ってるわけじゃねーみてぇだし、オレが貰ってもイイよな？」


は？Aのことを？マイキーが？確かに付き合っていることは隠してたけど…。は、え？？オレは必死に動揺する心を押さえ込んで平然を装った。その間もマイキーの真っ黒な瞳がオレをとらえて離さない。そんなの、オレの答えは決まってんだろ。


「もちろんイイっすよ。むしろ協力させて下さいよ。」


オレはごちゃごちゃ混ざって気持ち悪い感情を全て笑顔の下で包んで誤魔化した。イイんだ。王がオレの全てなのだから。

きっとAも王と一緒にいられたら幸せなハズだ。そう、幸せなハズ。なのになんで二人が笑いあう姿を想像したらこんなにも胸の奥をドス黒い感情が渦巻く？



いいかオレ。言い聞かせるんだオレ。

───王が全て。Aはその次。

この序列はオレの中で揺るぎない指針なんだよ。
それに愛するオレの考えなんだ。Aもきっと納得してくれる。俺はそう思い込むことにした。



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