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ラストシーン(yt×in＋？) ページ6

yt視点


例年より遅く始まった梅雨はまだまだ明けそうにないのに。
朝のニュースでお天気キャスターが嬉しそうに言った、
"今日は梅雨の晴れ間になりそうです"は本当になった。


早朝まで降っていた雨を久しぶりの太陽が照らして、街路樹の緑がきらきらと光る。

いつもならすぐにカメラを取り出してシャッターを切るのに、…今日の景色なんて残したくなくてそんな気分にもならない。



"うりゃー、負けねぇぞ！"

"ちょっと、危ないよ！それにそんな目立つことしないで"

"なんでだよ、こんな夜中だし、
回送電車だから平気。ほら、裕翔も！"


そう笑いながら電車に並んで走ったいのちゃんの無邪気な笑い声と、膝に手をついて息を切らす肩。


"やっぱり歳には勝てねぇなぁ"


そうやって笑ったこの辺りには、あの頃は咲いてなかった紫陽花が咲き誇っていた。


ほら、いのちゃん、濃い青と水色と、まるでいのちゃんと俺みたいだよ、綺麗だよ。

そう伝えたくてももう隣にはいない。
伝えたとしても、照れくさそうに笑ってくれることはもう、ない。


｢…はは、ほんと邪魔……｣


濃い青と水色の中に一際輝く紫に、思わず頬に一筋、流れていった。


ちくしょう、雨が降ってればよかったのに。
そうしたら悲劇のヒロインみたいに少しは浸れて、逆に楽になれたかもしれないし、この涙にも気が付かずに済んだ。


憎らしくも止んでいる雨はそこらじゅうをきらきら輝かせて、まるでいのちゃんみたい。


なにもかも眩しくて、シャッターは切れない。



『ごめ………ね、ゆ……でね、』

『もしもし？ごめん、電波悪い』

『裕翔、……なの、だか……ザザッ』

『ねえ、会って話してよ』


別れ話は電波状況に邪魔をされ、途切れ途切れで進まなかった。
伝わらない。伝えられない。
まるでいつからかすれ違った俺たちみたいだった。

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