Beautiful Moon 2nd (ページ39)

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お姫様のような豪華絢爛な王道のドレス、最近流行りのマーメイドのようなシンプルなドレス。どちらを身につけても絶対にAに似合う。

もちろん和装も捨ててはいけない。凛とした姿に白無垢を羽織れば奥ゆかしい美しい花嫁になる。

「いや、ドレス姿見てるじゃん」

ふっかは不思議そうに首を傾げた。

「CMで惜しげもなく披露してきただろ？」

ふっかの言う通り、Aはウェディングドレス姿を公の場で披露してきた。日本一有名な結婚情報誌のCMキャラクターを務め、頻繁にウェディングドレスを着ていたことがある。仕事とはいえ本物の花嫁さながらに着飾っていた。

それまでは相手役はいなかったのに、Aの年からなぜか新郎役が登場してよりリアリティが増した。当時俺が嫉妬と羨ましさで押し潰されそうだったことは誰も知らない。

「いや、してきたけど違うじゃん。ふっかは全然分かってない」

「分かってないとは何だ！」

「あれは仕事じゃん」

でも今は違う。嫉妬をする所は変わらないけど、俺と付き合っている事実がある。お互いに結婚の意志もある。

「俺とAの結婚式は仕事じゃないでしょ？」

「確かに」

「仕事じゃない結婚式でAのウェディングドレスを見たいの、俺は」

一生に一度、記憶にも記録にも残る晴れ舞台のために時間をかけて悩みに悩んでドレスを選ぶ。何を着ても素敵に着こなすのが目に見えているけれど、Aが選んだ特別なドレスを身に纏う姿。世界で1番美しいに決まっている。

「なるほどねえ」

ふっかは理解できたのかできていないのか、ふんわりと返した。沈黙が始まる。お互いそういう話をする歳になったのか、と感慨深くなっているのだろう。不思議と気まずくなかった。

「……でもさぁ？」

「ん？」

ふっかは柔らかく微笑んだ。

「俺自分の結婚は想像できないけど、照とAのはめちゃくちゃ想像できるのよ」

「うん」

「俺レベルになるとAのドレス姿見て、照は泣いちゃうんだろうなぁってとこまでセットで想像できる」

「ふはっ」

俺にも想像がつく。きっと俺は一目見た瞬間に泣いてしまう。今付き合っているだけでも現実離れしているのに、結婚だなんてあまりにも幸せだ。

「絶対泣くだろうね。だってAのドレスだよ？」

そんな未来を早く現実にしたい。俺の夢はまた1つレベルを上げた。