Beautiful Moon 2nd (ページ15)

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☆ ページ15

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今下にいるんだよねえ、とAは電話越しにでも分かるくらいにあっけらかんと笑った。

「はい？」

『だから、今照ん家のマンションのそばにいるの。照さえ良かったら一緒にどう？ 2人だけど』

ドクッ、と胸が高鳴った。

『照の時間、3時間くらいちょうだい？』

21時、特にやることもなく床に就こうとしていた。でも寝付けなかっただろう。

「俺、今部屋着だよ？」

『大丈夫、そのまま降りてきて。私もスウェットだから』

「オフすぎるだろ」

鍵と財布、手にはスマホを持つ。

『そっちだってオフでしょうが』

「長いオフを貰ってます……」

『あはっ！とりあえず照さえ良かったら降りてきて？』

「分かった。すぐ行く」

眼鏡をかけてスニーカーを履いて、マスクをして玄関の鍵を閉める。俺の足と気持ちはAに向いていた。髪の毛をセットするのも惜しいほど会いたい。エレベーターのボタンを押すとすぐにやって来てくれた。

たった数mの距離なのに急いで乗り込む。

「ねえA」

『ん？』

「……ありがとう」

Aだって辛いはずだ。持っていた仕事が続々とキャンセルになり、本来なら今頃はミュージカルの本番を迎えていた。先輩が主演を務めるのもあって俺も観劇する予定でいた。

でも本番直前で全公演が中止になり、振替もままならない。

『どうしたの、改まっちゃって』

振替公演が決まったとしてもリスケジュールできるかどうかは不透明だ。

「俺だって改まる時があるんですー」

『雨降りそう』

「失礼な」

『傘は持って来てるから安心して降らせてください』

「ねえ、俺雨男じゃないよ？」

『めちゃくちゃ雨男でしょ。そのせいで何回ずぶ濡れになったと思ってんの、こっちは』

ケラケラ笑っているAに降らせてねえし、なんて悪態をつきながらも夜の空には若干雲がかかっている。雨雲じゃなければいいな、なんて思いながら1階で降りてエントランスを早足で駆け抜ける。

外に出ると暑くも寒くもない、丁度いい温度だ。季節は少しずつ先へ進んでいる。

「今外に出た」

『了解。入口で待ってて』

ツーツー、と通話は切れた。程なくして白のコンパクトカーが現れた。俺の前で停まって助手席のドアが開く。

『やっほー！』

いつも通りの陽気な声。低くも高くもない心地よい声。久しぶりに会えた親友はAだった。