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「…っ、かわむら。」
「ん?どうした?」
タクシーの車内で、福良がまた掠れた声を出す。これ以上悪化されると嫌だから喋ってほしくないけど…スマホを取り出すのもめんどくさいのかもしれない。
福良は、少しだけ迷う素振りを見せた後、遠慮がちに僕の肩に寄りかかってきた。しんどくなってきたか。
「大丈夫?酔ったりしてない?…ん、大丈夫ね。」
ゆるゆると首を振る福良だけど、その顔は青白い。そんな後部座席の様子を見て、運転手さんが少しスピードを上げたのが分かった。
「福良さーん、福良拳さーん。」
予約無しだったから結構長く待たされて、やっと呼ばれた病院。呼ばれたよ、と福良を目を向けると、ゆっくり起き上がって僕の袖を引いた。…一緒に来いってね。
「すいません、この人声出せないんで一緒に入って良いですか。」
「どうぞどうぞ〜。」
看護師さんの承諾を得て、一緒に診察室に入る。受付で熱測った時は38.2℃だったけど、触った感じもう少しあるんじゃないか…?
答えられる質問には僕が答えて、いつからですかとか知らないものに関しては福良が答えを打ち込んだスマホをなぜか僕に見せてきたから代読して。
そんな感じで診断されたのは、夏風邪。まぁ予想通りだね…。お薬出すんで安静にしてくださいって、ただそれだけ。ま、重い病気じゃなくて良かった。
お礼を言って診察を出て、待合室で会計準備の列に並ぶ。しばらくしたら順番が回ってきて、今度はもう袖を引かれる前に僕も横に並んだ。
「本人確認のため名前と生年月日をお願いします。」
「あ、すいません本人声出なくて。福良拳、1993年8月7日です。」
「はい、大丈夫です。…あら?今日誕生日ですね。おめでとうございます。」
あぁ、そういえばそうだ。今日は8月7日。福良と、謎のキャラクターなびはなびの、誕生日。朝は覚えていたけど、ドタバタして忘れていた。病院でおめでとうを言われても微妙だけどな、と思いつつ福良をチラリと見ると、福良も少し引きつった笑みを見せていた。
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蘭(プロフ) - tmさんの性同一性障害お願いできますか? (12月30日 20時) (レス) @page37 id: 63a9fa29e6 (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - リクなんですけど、言ちゃんの喘息お願いできますか? (11月19日 21時) (レス) @page35 id: 63a9fa29e6 (このIDを非表示/違反報告)
ぷよーこ(プロフ) - 仲良し兄弟mnちゃんとgnちゃんのお話し、可愛くて凄く嬉しいです。ありがとうございます(≧▽≦) (7月15日 16時) (レス) @page4 id: 7d400068d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作成日時:2023年7月14日 23時