Melancholy of Mother's Day

和臣(2) ページ6

「母さん、急に帰ってきたのは何で？」
「え？え〜と……」
明後日の方角を見ながら言い訳を探している。

「“母の日”だから。じゃない？」
……返事をしないと言うことは図星。
ならば……

「母さん、俺はこうして久しぶりに母さんに会えて、とても嬉しいよ。今日は電話で顔を見ようと思ってたんだ。
母さんのこと大好きだから、“母の日”には顔が見たいし、近況報告もしないとね。
でも、もし俺が母さんと毎日顔を合わせていたなら、こんな気持ちにはならないよ。
だって思春期＝反抗期だからね。
今くらいの温度差が丁度良いんじゃないかな。」
まるで女の子を口説くように優しく瞳を見つめ言う。

「う〜ん……それもそうね……反抗期……そうかもしれない……」
母さんは遠い目をして考えている。
思い当たる事があるように。

そんな顔を見て、俺は顔には出さないが沸々と笑いが込み上げる。

俺は知っている。

向こうの家にはもう一人、厄介な反抗期を抱えていることを。
母さんは口もろくにきいてくれない弟に手を焼いている。

「例え俺がアメリカに行ったとしても、母さんの気苦労が増えるだけだよ。
俺のせいでシワが増えたりしたら俺、一生後悔する。
いつまでも…若くて綺麗な母さんでいてください。」
「和臣……あなた……大人になって……
瞳をうるうるさせ、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。


ごめんね、母さん。

俺は日本にいたいんだ。

好きだよ、単純な……いや、素直な母さん。

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