和臣(1) ページ5
塾から帰ると玄関に黒いヒールが揃えてある。
こんなに高いヒールを履くのは俺が知る限り一人だけ。
一瞬、頭が全ての思考を閉鎖する。
血の気が引いたままリビングへ入ると案の定、大きなスーツケースが置いてある。
帰って来るなら一言くらい連絡してこいよ。
怒りと困惑が渦を巻いた。
スーツケースを見たまま呆然としていると背後に人の気配。
息を呑むと同時に振り返ると、勢いよく抱きつかれた。
「和臣〜会いたかったわ！」
「うわっ、ちょ、母さん！」
慌ててホールドアップ体勢をしたが、強制的に顔を向けられた。
「母さんによく顔を見せて。暫く見ない内に大人なって。母さん、嬉しい！」
次の瞬間キスの嵐。
何度も生暖かい唇が頬に触れる。
「やめろ！」
ぐっと母さんの肩を押しやり離す。
「あら、何恥ずかしがってんの？」
言うなり今度は身体をペタペタ触りだした。
何なんだよ……親じゃなかったら完全に痴漢行為だぞ。
「身体も大分男らしくなってきたわね。でもまだまだお父さんの比じゃないわ。」
はぁ？フットボールやってた親父と比べる方が間違いだろ！
「背もあまり伸びてないし……」
ぐっ……さっき『男らしい』って褒めてくれたのに、もう落とすのかよ……
「いいだろ、んな事！それより服着ろよ！」
風呂上がりの母さんはキャミソールにパンツ姿。
いくら母親とはいえ、暫く会っていなかったからか目のやり場に困る。
「和臣ったら、もしかして照れてるの？思春期？」
ったりめーだろ。俺をいくつだと思ってんだ。
「本当に？あの小さかったサッカー少年が？思春期！？」
何度も言うな。意識上、俺自身は分からない事。
思春期突入の扉なんて無いから何をもって思春期なのか分からない。
「どうしましょ！？ お父さんに連絡しなきゃ。多感な少年を一人日本になんて置いてはおけないわ。」
え？ どういう意味？……
わざとらしく両手で頬を包み、声色は心配そうな感じに聞かせているが、瞳が……瞳が声色に伴ってない！
「もうすぐ夏休みでしょ？向こうは新学年だし手続きをしないと……」
わぁ〜！ ちょっと待った！！ やっぱりか！？
アメリカになんて行ってたまるか！
母さんは俺が日本に残る。と言った時、最後まで納得しなかった。
最終的に親父に叱られ、渋々了承したものだから、ここぞとばかりに連れて帰る口実に脳内がだだ漏れ。
話題を…母さんの意識を変えなくては……
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千祥(プロフ) - ピーチさん» コメント、ありがとうございます。いいですね！また妄想が膨らみます。面白そうなので思いついたら作らせていただきます！良いアイディア、ありがとうございました。 (2019年3月12日 23時) (
レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチ - 全員の話しが面白いです！いきなりすいません。あの勝手なリクエストなのですが忍がお母さんに負けてKZのみんなが忍お母さんの所に遊びに行くのが見たいです。本当に勝手ですいません。できたらでいいんです。 (2019年3月10日 21時) (レス) id: f54606642a (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - さあさん» コメントありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたなら、大変嬉しいです(^^) (2018年5月24日 20時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
さあ - 若武の最後のセリフで爆笑しましたｗ (2018年5月24日 6時) (レス) id: a71f0071db (このIDを非表示/違反報告)
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