Melancholy of Mother's Day

和彦 ページ4

毎年、今日という日は僕を悩ませる。

なぜなら、僕にとって“母”という存在は一人しかいない。
けれど母に負けないくらい愛を注いでくれる叔母様達。

“母の日”に母だけを立てれば叔母様達に負い目を感じるし、叔母様達も同じように立てては母に罪悪感。
プレゼントにしてもそうだ。
母だけ“特別”にすると角がたつ。
けれど学生である僕に全員同じ物。となると負担が大きい。

今年はどうしよう……

考え抜いた結果、今年は手作り夕食をプレゼント。
一月前からメニューを考え、レシピを調べ、段取りを覚えた。
一人キッチンに立って、昼過ぎから準備を始める。
叔母様達は僕が一人で調理するのが心配らしく、度々キッチンを覗いてくる。

『和彦ちゃん、何かお手伝いしましょうか？』
『くれぐれも気を付けてね。火傷しないで。』
『男の子がキッチンに立つなんて……お爺様が見たら泣いてしまうわ。』

・・・・

お願いだから放っておいてくれないかな……
声をかけられると気が散るんだよね……

その点、母はやっぱり“母”だ。
僕を信頼してくれているようで、一切顔を出してこない。
ソワソワする叔母様達を他所にドンと構えてる感じ。


いつもの夕食の時間に間に合わせると、カーネーションと霞草を飾ったテーブルへと運ぶ。
母と叔母様達が着座するのを見計らってシャンパンを注いだ。

「お口に合うか分かりませんが、どうぞ召し上がって下さい。」
軽く頭を下げると皆嬉しそうに食べ始めた。



食後のコーヒーも終わり、各々からお褒めの言葉を貰う。
母の日は大成功。
僕自身、とても満足できる仕事だった。
後片づけを済ませると、最後の仕上げ。

一日の終わり、叔母様達が自室へと引き上げたのを確認し、母の部屋へ。
そぉとノックもしないでドアの隙間から鉢を入れる。
今年は深紅の紫陽花にメッセージを添えて。

いつも ありがとう お母さん

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