Melancholy of Mother's Day

和典 ページ2

本屋からの帰り道、花屋の前が混雑していた。
何事か？ とチラリ覗いてみると、花を受け取る順番を待っていた。

あ、そうか……今日は母の日だ……

ま、俺には関係ねー事だ。
そもそも今日は京都へ学会へ行っていて、起きてから一度も顔見てねーし。

本人も忘れてんじゃね？
思いつつ花屋の側の信号を待つ。

『ママ、喜んでくれるかな？ねぇ、パパ、いつ渡したらいい？』
幼稚園くらいのガキが隣で父親と話している。

そう言えば…俺もあのくらいの時はカーネーション買ってたな……
今はほとんど顔も合わせねーし、口もきかねー。
親なんてウザいばかりだ……

『○○は何歳まで母の日にママに“ありがとう”って言えるのかな？パパ、○○の成長が楽しみだよ。』

うっ……なんだ、この父親。
俺に嫌味言ってんのかよ……

俺は……いつまでだったかな……

気づけば俺は母が嫌いだった。
何かと言えば俺の存在を否定するような事ばかり言うし、他所の家みたく家族旅行はもちろん、日曜日の買い物すら行ったことが無い。

・・・・

どんな顔してたっけ？

幼い頃母にカーネーションを渡した時、母はどんな顔をしていたか思い出せない。

『成長が楽しみだ。』

母の日に何もしないのって、親にすれば成長の過程なのか？
それは俺みたいにいずれ来る反抗期でさえも、親にすれば“喜び”って事なのか？
ワケ分かんねー……

俺は信号を渡るのを止め、花屋へと戻った。



夜遅く帰ってきた母とは顔を合わせていない。
けれど、テーブルに置いていたカーネーションは一輪挿しに飾られ、側には俺が好きな阿闍梨餅が置いてあった。

結局のところ、似た者親子って事なのか？

お互い“一言”を言える関係だったなら……

今日の阿闍梨餅はきっと苦いんだろな……

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