或る“最強親子”【五条悟】

二十九話 ページ32

暑い────、






暑い────────冷たい。





─────────寒い。







────────────苦しい。







・・
そこは真っ暗だった。


苦しい、辛い、寒い、暑い、重い痛い怖い悲しい─────

　 ・・・・
この世のすべての嫌なモノを詰め込んだような、暗い、寂しい、場所だった。



できるならば、こんなところで終わりたくなかった。

幸せになりたかった。





物語の────幸せな続きを見たかった。



鮮明な映像が脳内に溢れ出す。


みんなでやった戦闘訓練。

硝子の咥えていた煙草。

裏切られたあの日の雨。



映像だけじゃない、痛み、匂い、冷たさまで、鮮明に蘇ってくる。


嗚呼、これが走馬灯か─────


無感動に、どこか他人事のように、私は私を見ていた。



吸い込まれるような闇の中にひとり、ぽつんと佇む彼と、そして私。


終わらせなくてはいけないと、私は彼に向かう。


でも、掻き分けても掻き分けても────どろどろとした何かが、私達を阻む。


溢れるような私の感情が─────力が、それを阻んでいる。





私は気づいていた。


狂おしいほどに強い、その願いに。



生きたい───────と。




この期に及んで傲慢な、その願いを封じ込めるように、私は声を出す。


「──────領域展開───『忌凶禍獄匣(ききょうかごくこう)』」

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