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帰り支度をしていると、中庭で理子ちゃんがヘルメットを被った男子生徒にバットで襲われている光景が目に入る。
私の今出せる全速力で校舎内を走り抜け、腕を抑えて蹲る理子ちゃんに駆け寄った。
『理子ちゃん!』
「Aちゃん、来ちゃダメ…!逃げて…!!」
振り返ると、ちょうどヘルメットの男の子がバットを振り下ろそうとしていて、私はとっさに理子ちゃんを守るように腕を広げて立ち塞がる。
目をぎゅっとつぶり、衝撃を覚悟していたはずが痛みを感じることはなく、恐る恐る目を開けると、バットは寸前のところで止まっていた。
ヘルメットを被った男の子と視線が合うと、思いっきりそらされてしまう。
「…アンタ、名前は?」
『AAです』
「AAか…。A、俺の女にしてやるよ。そこの女倒して、軟高のテッペン取るからさぁ」
『理子ちゃんが軟高の?』
「なんか勘違いしてるみたいなの。それにAには彼氏がいるんだから、アンタなんかとは付き合わないわよ!」
「…だったら呼んで来いよ。軟高のテッペンとAの男をよぉ」
「呼ぶわよ」
『えっ…』
「ほら早く呼べよ!!」
「三ちゃ〜〜ん!Aちゃんも早く!」
『ええっ…た、猛くんっ…!!』
居るはずのない猛くんの名前を呼んだって現れるわけもなく、その場にしばらくの沈黙が流れる。
「ふざけんじゃねえぞ。このバカが!」
ヘルメットの男の子がバットを振り上げた瞬間、伊藤くんと猛くんが同時に現れ、猛くんの蹴りが男の子の腹部に直撃した。
その衝撃で吹き飛ばされた男の子が地面に倒れるのを覗き込もうとすると、猛くんに腕を引かれて止められる。
『猛くん、どうしてここに…?』
「ちょうど迎えに来る途中でこの前通ってたら、Aの声が聞こえたからよら。怪我は?」
『私は大丈夫』
「一瞬マジで焦ったわ。どこもなんともねぇよな?」
『うん。平気だよ』
私の返事を聞いてもまだ心配してくれているみたいで、猛くんが私の頬を両手で包んで撫でる。
その体温が心地よくて、瞳を閉じて猛くんに身を任せた。
まさか本当に来てくれるなんて思わなかった。
なんだかスーパーヒーローみたい…。
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未亜(プロフ) - 青葉さん» 青葉さん、コメントありがとうございます!誤字訂正させていただきました! (2019年8月12日 6時) (レス) id: 6167177232 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - 物語読んでいて気が付いたのですが...。 29-5.のここの台詞 『私と話がしたいんだよね。逃げようとしてごめんなさい。別れ話でもちゃんと聞くから、美咲さんに怒らないで』 これ正しくは美咲さんをではないんでしょうか? (2019年8月10日 1時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - 物語読んでいて気が付いたのですが...。 29-1.嫉妬しましたのここの部分 きっとチョコレートの食べ過ぎて胸焼けしてるのね 味見はしばらく控えるようにしないと… これ正しくはチョコレートの食べ過ぎで もしくはチョコレートを食べ過ぎてではないんでしょうか? (2019年8月10日 1時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - 何度も続けてのコメントですみません...。 物語読んでいて気が付いたのですが...。 同じく28.会えない日々のここの台詞 「…私、猛の彼女の見てみたいんだけど!」 これ正しくは猛の彼女のことではないんでしょうか? (2019年8月10日 1時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - またまた続けてのコメントですみません...。 物語読んでいて気が付いたのですが...。 28.会えない日々のここの部分 ※美咲さん、今回の話でお名前被ってしまってすみません。 これってどういう意味なんでしょうか? (2019年8月10日 1時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未亜 | 作成日時:2019年3月2日 19時