相良くんと高嶺の彼女２

26-2. ページ17

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人混みの中、はぐれないようにAの手を引いて歩く。
しばらくそうしていると、Aが俯きがちに俺の名前を呼んだ。



『猛くん』


「ん？」


『ごめんね。私のワガママに付きあわせちゃって…』


「別にこんくらいワガママに入んねぇよ」


『でも、さっきから怖い顔してる』



そう言って、Aが申し訳なさそうに俺に笑いかける。
Aの申し出をワガママだなんて思うはずはなくて…
むしろもっと言って俺を頼って欲しい。
俺の顔が険しくなっていたのは単に、鼻の下を伸ばして着物姿のAを見ている周りの連中が気に食わなかっただけだ。

Aのこと見てる野郎にムカついた
とか、俺だけが余裕ねぇみたいで言えねぇ

表情が暗くなってしまったAに違うって伝えたいのに、プライドが邪魔してできない俺は、Aの腰に手を回して引き寄せると人混みのど真ん中でAにキスをした。



『な、なななんっで今』



クリスマスに初めてキスをした時から何回もしているのに、いつも初々しい反応をするAがたまらなく好きだ。

まぁ、人前ですんのは今回が初めてだっけ？



「したくなったから」


『みんな見てるのに、こんなところで…』


「見せつけてやりゃあいいだろ」


『もうっ』



真っ赤になって、俺の胸元に顔を埋めるAを抱きしめる。
さっきより多くの注目を集めることにはなったが、Aが俺のものだって周りに示せたことに俺は満足していた。



「腹減ったわ。なんか食いに行こうぜ」


『待って。絵馬書かないと…！』



お参りを済ませ、完全に屋台の方へ目移りしていた俺をAが呼び止める。
Aにとっては毎年恒例らしく、Aの願いごとをできることなら叶えてやりたくて、手元を盗み見ればそこに並ぶのは"世界平和"の文字だった。

AらしいっちゃAらしいけどよ…
俺の出る幕ねぇじゃねぇか



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