芽生える友愛は不変なり ページ4
さて、散々姫と騎士のようだとは客観的に述べたものの。
実の所は普通に仲の良い親友同士であり
2人の関係を妄想して、盛り上がって居るのは外野だけなのだが。
「ねぇ、A。銀座の大通りに新しい洋食店ができたのよ。しのぶも一緒に寄って帰らない?」
「駄目です。今日は安静にして後日にしましょう」
身長差のあるため、少し覗き込むような形でカナエがAに誘いをかける。
しかし、先程ふらついたのを気にしてか素っ気なくAは断った。
しかし、カナエはかえって上機嫌にクスクスと鈴を転がす。
「ふふふっ、不思議ねぇ。私、もうずっと昔からこうして貴女と生きていた気がするわ。この時間が続けばいいのに」
「えぇ、私もですよ。カナエとこうして話している時間が幸福で、何よりも愛おしい。だから残された時間を大事に過ごしましょう」
「そうね」
ほらぁ!!!!
まぁた軽率にそういうことを言う!!!!!!
そういう所だぞ!! 御二方!!!!
聞き耳を立てていた女学生の声なき悲鳴が聞こえるようだ。
本人達の少しおかしな距離感と、人と少しズレた思考回路を持つせいで、他意は無いのにも関わらず意味深に聞こえるのだ。
「ねぇ、A。寄り道が駄目なら、しのぶを迎えに行った後でお裁縫の課題をするのはどう?」
「私はカナエを早く帰らせたいのですが」
カナエの誘いに、そういう問題ではない。とばかりに、呆れた顔をする。
それに負けじとカナエはコロコロと笑う。
「Aは刺繍、苦手じゃなかった? 苦手なことも一緒にやってしまえば、きっと楽しいわ。それに、躓いたらすぐに私が教えてあげられるもの」
「カナエ……」
「ね、残された時間を大事に過ごしてくれるんでしょう?」
トドメだとばかりに、儚げな微笑みと共にもう一押しされては
「……胡蝶家に呼んで頂けるなら」
カナエに甘いAは敢え無く折れてしまった。
胡蝶家で行えば万が一体調が悪くなってもすぐに休めるという判断だろう。
「決まりね! ふふっ楽しみだわ」
「カナエ、あまりはしゃぐと体温が上がりますよ」
軽やかに階段を駆け下りて下級生の教室の前へと踊り歩くカナエに、続いてAも1年生の教室を覗いた。
「しのぶ、姉さんが迎えに来たわよ。お待たせ」
「こんにちは、しのぶ」
「こんにちは、Aさん。姉さんも。相変わらず仲がいいのね。噂になってますよ」
記憶が無くとも、遠い記憶と変わらぬ2人の友愛がしのぶには美しく、とても尊いと思うのだった。
【錆兎】その響きはむず痒くも心地よく→←【胡蝶カナエ】互いに記憶はなくとも
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作者名:ひよこまめ | 作成日時:2019年12月10日 19時