出会い ページ9
(Aside)
この牢屋に幽閉されて、5年。
5年もあれば、逃げ出す暇もあったんだと思う。
けれど私はそうしなかった。
逆らう気力を失うほどの暴力や、おぞましい行為をたくさん、されてきたからだった。
逃げようとして捕まったら、さらに恐ろしいことをされる。そう、植え付けられてしまったからだ。
あれから何人、彼奴らの命令で殺したんだろう。
もう、覚えていない…。
私の意思なんて、ここでは関係ないのだ。お腹が空いたとか、眠たいとか、寒いとか。そう言うこと全て関係ないんだから。
しかし、5年経って分かったこともある。
彼奴らは自分の意思で私に殺人を命令しているわけではない。【彼奴らの後ろにいる憲兵の意思】だ｡
中央憲兵から定期的にリストが送られてくる。
反王政活動をしていた者の、だ。
反王政を謳い、集まった集団の連中の名前。
仕事場や学校で、王政に対して反逆と見なされるような事を口にした、反王政になる可能性があると見なされた人間の名前。
そうすることで、秩序が保たれるらしい。
…彼奴らからしたら。
月に数回、憲兵の人間がここを訪れる。
この前もそうだった。でもいつもと少し違った。
盗み聞きをするに…彼奴らと憲兵団は仲違いした。
理由は簡単、殺人をしているのに報酬が少ないと、男たちのひとりが言ったからだった。
私達はこのままだと捕まえられて、処刑される。
だからお前が、この場所を憲兵から守れ。
それが新たな彼奴らからの命令。
はぁ、…面倒だ。
危険なことも面倒なことも全て私に投げ捨てて、私をさんざん痛め付けておいて、終いには守ってくれといい盾にされる。
面白いくらいに、モノ扱いだなぁ。
まぁ別に、どうでもいいか。
私は最初に連れてこられた地下街の建物の前で、銃とナイフを持ってたっていた。かれこれ1時間くらいだろうか。
そもそも本当に憲兵団は今日、私達を捕まえに来るのだろうか。それすら分からない。分からないが、私が憲兵を全滅させるまで私はここで立たされるのだろう。それだけは分かる。
遠くから、キュルキュルと独特な音が聞こえた。
「…きた」
奴らはどうやら立体起動をつけて万全の状態で私達を捕まえようとしているらしい。
あぁ、やっぱり面倒だ。
私はナイフと銃を握り直した。
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月20日 17時
