◆ ページ5
怖い。怖くてしかたがない。
こんなことなら、外に何て出るんじゃなかった。
しばらくして、『立て』と言われ、馬車から降りると何やら階段のようなものを降りさせられた。
目が見えないのでつっかえそうになりながらも、何とか降りきると、また『歩け』と移動させられる。
少し歩くとがちゃりと鍵を開けるような音が聞こえる。到着したのだろうか。扉をくぐり何歩か進んだところで、私は腹を思い切り蹴られた。
「うぐ…っ」
そのまま手を縛られているので手もつけないまま、私は冷たい床に倒れこむ。頬に痛みと冷たさを感じ、骨がみしみしと嫌な音を立てた。
『目隠しを外させろ』
男のうちひとりがそういい、ようやく目隠しが解かれると、そこは暗い牢屋だった。
室内は薄暗くて、白い机以外何もない妙に不気味な場所だった。
「こ、ここは…」
震える声で言葉を発すると、思い切り蹴られる。
『しゃべんじゃねぇよガキ…』
『おい、そうイライラすんな。こいつには俺らの
”仕事”を手伝って貰うかもしれないんだぞ』
『な、…仕事を！？正気か！』
『見られた以上、仕方ないだろうが』
2度ほど殴られたせいで息ができない。
ひゅー、ひゅーと鳴る喉で男たちの会話を聞くこともままならなかった。
『おい』
意識を失いかけていたとき、男のひとりが私に話しかけてきた。
『お前、死にたくないか？』
私は必死になって首を縦に降る。
さっきまで両親のところに行ってもいい、何て考えていたくせに、いざとなると人間はこうなってしまうらしい。
しかし、次の言葉で私は今の行動を酷く後悔する。
『なら、人を殺せ』
何と言ったのか、私には分からなかった。
『簡単だ。このナイフで、人の首を切ればいい。
この首の横の部分を狙えば、一撃だろう』
「わ、私にはそんなこと…っ」
そう言うと、また腹を蹴られる。
「ごほっ！けほ、…」
口のなかに血の味が充満して気持ち悪い。
人を殺すなんて、無理だ。私にはそんなこと出来ない。それに、そんなことをしなきゃいけない理由も、私には分からない。
『なら死にたいか？』
そう聞かれ、頭が真っ白になった。
私の脳裏に浮かぶのは、あの時寄ってたかって殴られていたあの小柄な男性。
あんな風にはなりたくない。そう、思った。
「…わかり、ました」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月20日 17時
