調査兵団の右翼と左翼【進撃の巨人】 (ページ20)

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◆ ページ20

人を殺すことは楽しかったか？

そう尋ねられたら、私はもちろん否定する。

誰が好きで人なんか殺すかよ、と。

その背景には、簡単には語ることの出来ないような、想像もつかないような、おぞましい過去がある。

リヴァイさんもまた、否定した。

そして彼の背景にもまた、私には想像さえつかないような過去が、広がっている気がした。

部屋は沈黙に満ちた。それが、どれほどの時間だったのかはわからない。
謝るべきだったのだろうが、彼の背景にある過去の事を考えれば、簡単に言葉を発していいものではない気がして、黙っていた。

沈黙を破ったのは、リヴァイさんだ。

リヴァイ「お前は、自由になりたいんだろ」

突然の問いに驚き、彼の顔を見る。
真っ直ぐな相貌と私の視線が交錯する。

私が肯定も否定もする前に、リヴァイさんは言葉を結った。

リヴァイ「お前からすれば、あの地下街の牢屋から出てこうして暮らすことが出来れば満足なのか？」

「どういう、ことですか…」

リヴァイ「＿あそこにいたお前からすれば、ここは確かに自由に見えるかもしれねぇが、…
壁の中の人間は皆、巨人によって自由を奪われてる。生まれた時から壁があるせいで気づかない奴らがほとんどだが、…壁のせいで外に出れないのも、この世界があまりにも狭すぎることも、巨人による”支配”のせいだろ」

「それは、…仕方のないことじゃ」

リヴァイ「…ならお前があの牢屋に閉じ込められるのも、仕方のなかったことなのか？」

出来るのならば、リヴァイさんの言葉によって気がついてしまいそうな世界の残酷さに蓋をしたかった。この人の言うことは正論だ。そして、それを正論とするのであれば。

リヴァイ「A…牢屋の外に出て終わりだと思うな。お前が自由になるのは、巨人を駆逐し、この壁とかいう本物の牢屋の外に出た時だ。

…そしてA、
お前が苦しんだように、この壁に閉じ込められて、自由がほしいと嘆いている奴らがたくさんいる」

「それを、解放するのが”人類のため”＿＿？」

我々は生まれた時からすでに支配されていたと言うのか。こんな狭い世界の成り立ちですら、あの薄暗い牢屋にいた私は気がつかなかったらしい。

私は彼奴らから支配されてるわけでもない。調査兵団にこれから支配されるわけでもない。
巨人というよくわからない生物に、姿もわからないそんな生物に、支配されて生きるのか。

どうして、こんな世界の残酷さに、気がつかなかったのだろうか。