調査兵団の右翼と左翼【進撃の巨人】 (ページ15)

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◆ ページ15

(Aside)

今、”いい名前”だと言ったのだろうか。

男＿リヴァイと名乗ったその男は、私の部屋に来るなりそんなことを言った。

そもそも、名前を呼ばれること自体、何年ぶりか。
”悪魔”と呼ばれ恐れられるか、”玩具”として彼奴らや憲兵に弄ばれるかのどちらかだったから。

人間扱いされるのにはあまり、慣れていなかった。

最も、調査兵団は私を人間扱いしてくれた。
こうしてベッドのある部屋に私を入れて、鍵もかけず放置をした。さらに食事まで与えてくれるという。

ここに来る道中、私は本当に正しい選択をしたのかと何度も何度も考えていた。

私はそもそも、もう戦いたくないと思ったはずだ。しかし、調査兵団にいる以上は戦いは避けられない。私が”悪魔”と恐れられる理由であるこの能力を、調査兵団が必要としたからだ。

この能力のせいで、私は苦しんできた。ずっと。
こんな能力がなければ、私は用済みとしてずっと幽閉されることなんぞ無く、とっくに彼奴らや私が殺してきた対象者に逆に殺されていたはずだ。

この能力を持ってしまったがゆえ、私は生き残るというさらに苦しい道を辿ってきたのだ。

…調査兵団も、同じだと思う。
生き残る人と生き残らない人がいて、強くて能力がある人だけ、永遠に戦わなければならない。

その凄惨さ、残酷さが”人類のため”何て言う綺麗事のおかげで、見て見ぬふりをされているだけだ。

調査兵団はきっといい人なんだと思う。地下街の連中からしていた悪いオーラも全く感じない。
でも、やってることは彼奴らと同じだ。私の能力を保持するために私を飼い、この兵舎に幽閉して、戦わせ続けるのだ。

彼奴らからは一旦逃れられた。でも、彼奴らから逃れることだけが”自由”なわけじゃなかったんだ。

…ただ、私がこの男のいうことを馬鹿みたいに信じて連いてきてしまったのは。

この人は私と似てる。そんな直感からだった。

この人はきっと、凄く強い。私も強いから分かる。
そして、能力のせいで孤独を感じている人だと。

ただ、圧倒的に違うのは。

私はまだ彼奴らからの呪縛から逃れられない位に、精神が弱いということだ。

外の人は皆、私を殺そうとしてくるから話すな。
外の人にもし食事を与えられてもけして食うな。
外の人を信用するな。出汁に使われるだけだ。

…そう、彼奴らから教えられた。身体をもって。