◆ ページ11
(Aside)
ひとりの小柄な男が、私の前に立体起動で降り立った。もう憲兵は残ってはいないと思ったのだが、まだ残っていたのか？
目線だけ上にあげると、先程まで嫌というほど見たあのユニコーンのマークではなく、
自由の翼が目に入った。
自由…。
私は自由とは無関係だ。
こうして捕らわれて、人の言うことを聞くことでしか生きていくことの出来ない、哀れな人間だ。
自由の象徴であるそのマークを目にして、私は何を思ったのか、「早く、殺して…」と呟いた。
今までの罪を乞うたのか、ただ今の状況が辛かったのかは果たして分からない。
ただ、何故か。
この人になら殺されてもいいと、そう思った。
この人の手で終わらせてくれるのなら。
何故そう思ったかは、わからない。
本能という奴だろうか。
リヴァイ「…お前は俺を殺そうとしねぇのか」
男は私に問うた。
「…貴方は、調査兵団だから対象者じゃない。
私の、仕事の範疇じゃない…。
だから、早く、私のこと…」
対象者じゃないと言ったのは、咄嗟の出任せだ。
戦うことはもう嫌だ。もうこの生活も嫌だ。
自由の翼を掲げる貴方が、私を自由にしてほしい。
そう、願ったのかもしれない。
再び乞う私に、男は言った。
リヴァイ「チッ…殺さねぇよ」
男は立体起動の留め具を外して、床に落とした。
リヴァイ「お前を調査兵団に勧誘しに来た」
「…なん、で…？」
口から出たのは、まずそれだった。
何で兵団が殺人鬼の私の事を欲しがるのか、よく分からなかった。
しかし、私に対して戦意がない事を示した今、本当に男は私を調査兵団に勧誘するために今、ここにいるのだろう。
リヴァイ「お前の力が必要だからだ」
「私の力なんて無くたって、貴方達は戦える…。
それに、何で殺人鬼の私を…」
リヴァイ「団長の意思だ」
話が大きすぎて頭が混乱する。
ここから離れたら、彼奴らから離れたら私は何をされるか分からない。
それに、もういいんだ。別に生きていなくなって。
ただ、目の前にある自由の翼がどうしようもなく。
どうしようもなく輝いて見えた。
私も、調査兵団に入ったら。
”自由”を手にすることが、出来るのだろうか。
「私も、自由になれますか」
こんなこと聞いたら困るだろうと分かっていた。
けどお世辞でも何でもいい。私でも自由になれると言ってほしかったのだ。
リヴァイ「あぁ、…お前は自由だ」
やけに信頼出来る力強い声が、耳に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月20日 17時
