◆ ページ32
「それは……良い事、なのでしょうか」
私がしてきた行いがふと頭を過る。
世間とは単純なものなのだと、最近分かった。
皆私の正体を知らないとは言えど、人類に身を捧げる私の事を見れば正義の味方だと簡単にもて囃す。
エルヴィンさんは一瞬黙ってから、再び微笑む。
エルヴィン「少なくとも兵団にとっては大きな出来事だ。Aやリヴァイのおかげで兵団の認知度も上がり、明るい声も増えた」
「そうですか…なら、良かったです」
俯いてそう言えば、エルヴィンさんが苦笑いをして言った。
エルヴィン「それにしても、今日は随分お堅い態度なんだな。もう少し今は肩の力を抜いてもいいんじゃないか？」
彼のその言葉に、はたと考える。
自分でも気がついてはいなかったがどうやらそんなにも堅い態度を取ってしまっていたらしい。
それに気がついた時ふっと、自分自身の空気が緩み肩の力が抜けたのが分かった。
「そんなにですか？まぁ壁外の後だからちょっと
引きずっちゃったのかもしれないですね…エルヴィンさんも遅くまでお仕事お疲れ様です。
…あ、せっかくお話ししていたところ申し訳ないですがもうすぐリヴァイさんとの約束の時間なので、そろそろ失礼しますね」
エルヴィン「あぁ、構わない。むしろ長々私が君を独占すれば私が怒られるだろうからな…。
Aも、壁外後何だから無茶はしないように」
「…了解です、エルヴィンさん」
私は彼に微笑み返し、団長室を後にした。
・
リヴァイ「…遅かったな」
「すみません、エルヴィンさんのところにいて…」
リヴァイさんは「別に怒ってるわけじゃねぇよ」と言いながら私を部屋の中に招き入れた。
壁外から帰ってきてずっと働き詰めだったので、今日の夜には壁外で起こった班での出来事や問題等の確認の擦り合わせをすると呼ばれたのだった。
リヴァイ「それで、班からはひとりも負傷者は出ていないんだよな？」
「はい、擦り傷ひとつすら無しです。体調の変化もないですし、精神面でも安定が見られるかと」
今朝確認した班員の様子を思い浮かべながら伝えると、何やら妙な顔をされる。
リヴァイ「…何でそんな堅い態度なんだ？」
「…それ、エルヴィンさんにも同じことを言われたばかりです」
そんなに肩に力が入っていたか、と苦笑いをして返すと、リヴァイさんは「あぁ」と呟く。
リヴァイ「＿＿5年前の”あの日”だからか？」
私は小さく頷いた。
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月29日 19時
