茨の君に最上の呪いを【狗巻棘】

21 境内にて。2 ページ21

…




｢ほ、本当に迷子になっちゃった……｣
あれから(気持ちでは)１時間くらい経って、もう当たりは電気がないと何も見えない。

提灯のある所は人が沢山いるから、今の状態で行ったら、きっと傷つけてしまう。

｢でもこんな暗いとこ、探さないよね……｣

考えても仕方ないってわかってるけど、帰れなかったらどうしよう。物理的に帰ることは可能でも、その道中で人との接触がぜったいないなんて言えない。

折角真希ちゃんに髪飾りとか一緒に選んでもらったりおめかししたりしたのに、最後こんなんじゃなぁ。あ、蚊に刺されてる。かゆい……

ムヒを探してごそごそ。あわよくばって思ったけれど、やっぱり予備の呪符も落としてる。余計に気分下がった。

みんなのことを探し疲れてしまった。何よりこの蒸し暑さだし、休憩しないと帰りで起きてられなくなっちゃう。

そう思ってふらふらたどり着いたのがこの境内だった。


｢神様ごめんなさい……失礼します｣

ぺこりと頭を下げて、縁側のような所に座らせてもらう。自分が神の一部を借りるような形態の術式を使っているので、なんとなくここが安全な気がしてくる。

お化けを怖がるような歳ではないが、流石に暗くなると独りぼっちは寂しいし、ちょっとだけ怖い。

｢みんな……｣

こんな長時間外にいるのなんて、初めてに等しい。
約束守れなかった……はぐれちゃった……なんて自責の念にかられていると、段々不安になってべそべそ泣き始めてしまう。


1人の時に知らない人に話しかけられちゃったらどうしよう。怖い人来たらどうしよう。触らないでなんて言おうもんなら、きっと逆上させちゃうし……


ぐすぐす泣きながら暫くそこにいると、ガサガサと植木辺りを歩く音がした。

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