8話 夕餉 ページ9
「ふー。戦ったら暑くなっちゃった。アルルンお茶ちょーだい」
「はいどうぞ」
どこから出したのだろうか。アルストリカの手には水筒が握られていた。
「うまーーい!!!この麦茶ッ………!キンキンに冷えてやがるッ……!」
「仕事終わりの定番よね。そのセリフは炭酸麦茶でやるものよ」
「アルストリカに馴れ馴れし過ぎるぞ貴様ァ!!」
嫉妬しているのだろうか。怒りに身を任せ気品を失ったウィルリス。
「うるさいなぁ………ウィンナー・ハイボール…だっけ?こっちの世界では僕とアルストリカの方が長く居るんだけどなぁ」
ミクオは無意識に彼の怒りを買って行く。
「ぐぬぬぬ…………!!!!ああ言えばこう言う!!!!」
「主様落ち着いて下さい…彼?彼女?はこういう性質だと…」
またまたどこから出したのだろうか。アルストリカはこの熱帯雨林にテーブルを用意して高級ワインとローストビーフを用意し始める。
「チッ…まぁいい。僕も少し気が動転していたよ。そういう事にしよう……」
「わーい!肉だー!」
傍から見れば理解しがたい光景だ。魔獣の死体の積み上がった赤黒い森の中に白いテーブルクロスが映える。死体はみるみる光に溶けていくから光の粒がとても神々しく見えた。
「僕はアルストリカの血で構わないのだが…な!」
ウィルリスはウインクをしながらアルストリカを指差す。
「キモーい☆」
すかさず茶々を入れるミクオ。悪気は無い。
「ミッ、ミクオ!!」
「貴様ァー!!!」
ウィルリスは右手に持ったナイフをミクオの手にぶっ刺した。
「いたいなーもー、何?アルルンの血?キミってもしかして吸血鬼?」
緑色の光が手のひらから出たと思えば傷は元通り。ナイフはミクオと接触していた部分だけが塵になり真っ二つになって落ちた。
「貴様の方がよっぽど化物だと思うがな…」
「ねーねー、なんでこの森の植物の葉っぱってアレなの?まだ『赤み』があるの?」
「確かに…」
「話のテンポが早い!!早いですけど…確かに気になりますね…」
3人は特に血というものに慣れているエキスパートだ。テーブルに身体を預けて上にある枝葉を見つめる。
「酸化してないだけでは無いのか?」
「いや、主様…植物には光合成というものがあります。少なからず葉の近くは酸素に触れるはずです」
通常ならば血というものは酸化してどんどん黒くなっていくものだ。しかし葉は茶色いものの、赤みを帯びているのが日に透けてわかる。
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作者名:ミミック | 作者ホームページ:https://twitter.com/neidangel
作成日時:2018年8月4日 21時