幼馴染み 裕太編 6 ページ44
Asaid
その日の夕方、星口さんから電話が有った。
出来るだけ早く会って話がしたいと言われ、一時間後に星口さんに言われたお店に行くになった。
良く考えれば仕事の話なら、直接私ではなく事務所に連絡が有る筈なのに、その時の私は初めての写真集の撮影の後で、何か有ったのかと不安になり、深く考えずにその場で星口さんと約束をしてしまった。
約束の時間より早く着いた私は、先に個室に通してもらい不安なまま星口さんを待っていた。
時間になりやって来た星口さんが部屋に通されると、私の不安そうな様子を察したのか、
星口「先ずは食事をしよう。話は後でゆっくりね。」
星口さんは笑い掛けてくれるけど、今の私には喉を通る気がしない。
「話って何ですか?」
そう声を掛けると、
星口「仕事終わりでお腹が減ってるんだけど、Aちゃん、付き合ってくれないかな?」
優しい星口さんの口調に、それ以上聞く事が出来なくて、"はい。"とだけ答えた。
初めは星口さんの真意が分からず話す事が出来なかったけれど、食事をしながらお姉ちゃんとの撮影を面白可笑しく話す星口さんの話に、いつの間にか引き込まれてしまっていた。
食事が終わり、私はどうしても気になっていた事をもう一度聞いてみた。
「星口さん、話って何ですか?」
私の言葉に、星口さんはバックから封筒を取り出すと、
星口「此れなんだけど・・・」
そう言って封筒の中から取り出した写真を、私の前に並べた。
「あっ・・・」
思わず声を上げた私の前に置かれた写真には、私のマンションの駐車場から、愛車で出て行く裕君の姿が有った。
星口「やっぱり玉森君は、君の部屋から出て来たんだね。
君達が幼馴染みだと言う話は、僕の耳にも入って来てたから、もしかしたらと思ったんだ。」
「えっ?」
星口さんは、確信があった訳では無かったんだ。
それなのに私は・・・。
俯いて唇を噛み締めた。
星口「ごめんね、試す様な事をして。
でもAちゃんの事が心配で・・・ごめんね。」
私は星口さんの言いたい事の真意が分からず、困ってしまった。
星口「"どうしてだ"って思うよね。」
黙ったままの私に、星口さんはそう声を掛けた。
「・・・はい。」
私はそう答えるのが、精一杯だった。
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作者名:紅廉 | 作成日時:2017年8月25日 1時