幼馴染み 太輔編 11 ページ27
太輔side
俺の問い掛けに少しの迷いもなく、
「私は大丈夫。太ちゃんを信じているから。」
Aは笑顔で、そう答えてくれた。
だから安心していたんだ。
本当はAは、傷付いていたのに。
俺の為に嘘を付いていたのに、俺は気付いてやれなかった。
君が本当はどれ程不安で、寂しい想いをしていたのか。
Aが本当の気持ちを隠して、
「撮影中は、無理に連絡しなくて良いよ。」
と、言ってくれた時だって、寂しくは思ったけど俺の事を考えて、信じてくれているからだと思っていた。
けれどその言葉は、君の不安を俺に悟らせない為だったんだね。
ある日渉が君の事を心配して、
渉「太輔、最近ドラマの方はどう?
忙しいみたいだけど。」
何時もの様に聞いてきた。
太輔「ちょっと押してて、昨日も余裕でテッペン過ぎたよ。」
そう笑って答えると、急に真面目な顔をした渉が、
渉「なぁ太輔。忙しいとは思うけど、ちゃんとAちゃんと連絡取ってるよな?」
そう言って、君との事を心配してくれた。
だけど俺はそんな渉の言葉を、"心配し過ぎ"と、笑い飛ばした。
渉「上手くいってるなら良かった。
Aちゃんて、自分の気持ちを押さえ込む方だから・・・。
まぁ太輔の方が、俺より分かってるよな。
ごめん、余計なお世話だよな。」
渉はそう言って笑ったけど、俺よりAの事を分かっていたのは、実は渉の方だったんだね。
正直俺は、甘えていたのかも知れない。
俺達の幼馴染みという関係に。
悔しかった。
渉が分かる事を、彼氏の俺が気付いてあげられなくて。
"本当にごめん。"
君はちゃんと、サインを送ってくれていたのに。
本当は気になっていたんだ、君の変化に。
最近放送されたドラマの撮影中のAの様子に、俺は違和感を覚えていた。
君の電話の声に元気が無かった事や、久し振りに会った君の顔色が悪かった事が気になっていた。
だから君に聞いたけど、やっぱり答えは同じだった。
「私は大丈夫だよ。」
その言葉を俺は、また受け入れてしまったんだ。
だから春菜から君の具合が悪いと聞いた時、驚きもしたけど、"やっぱり"そう思う気持ちも有った。
"俺があの時、Aにちゃんと聞いていれば。"
後悔ばかりが俺の心に、重くのし掛かる。
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作者名:紅廉 | 作成日時:2017年8月25日 1時