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幼馴染み 渉 編 5 ページ11

Aside


眠っていた額に、冷たいものが触れて目が覚めた。




「目、覚めた?
俺、具の無い茶碗蒸し作ったんだけど食べる?
それとも汗かいてるみたいだけど、着替える?」




渉の優しい笑顔に安心して、




「私、わっ君の茶碗蒸しが食べたい。」




私がそう答えると、




「OK、待ってて。」




そう言って渉は、キッチンに向かった。




独り暮らしで困る事は、病気の時だ。




だけど今回は、渉のお陰で何一つ困る事は無かった。




渉が作った茶碗蒸しを食べて薬を飲むと、汗をかいている事に気付いた。




汗をかいてしまった私は、着替えたくなってしまった。




でも、流石に着替えまでは頼みづらい。




どうしようかと悩んでいると、




「A。替えの下着やパジャマは、何処入ってる?
汗かいたから着替えよう。」




答えに困っている私に気が付いて、




「何を今更。小さい頃は、一緒に風呂も入ってたじゃん。」




さらっと当たり前の様に言った。




「それって何時の話よ。幼稚園の時でしょ。」




焦る私を見て笑いながら、




「今も大して変わんないだろ。でも、それだけ元気なら自分で出来るな。」




そう言って、キッチンに向かった。




私がベッドから起き上がり、着替えを取りに行こうとしたら、バランスを崩して転びそうになった。




"あっ、転ぶ。"




そう思った瞬間、私の腕を渉が掴んだ。




「何やってんの。危ないだろう。
本当お前って、危なっかしくて目が離せない。」




掴んでいた手を引き寄せられたから、すっぽりと渉の腕の中に収まった私。




自分の心臓の音が、聞こえてくる程ドキドキしている。




「渉、もう大丈夫だから・・・ごめんね。」




渉を見上げると、




「もう遠くから心配するのに疲れたから、傍で守らせてよ。」




渉の真剣な表情に、ドキドキが止まらない。




"私、渉の事が好きなんだ。"




きっと随分前からそうだったのに、今の関係が壊れるのが怖くて、気付かない振りをしてたんだ。




今度は口に出してみた。




「私、渉が好き。」




「・・・俺も。」




そう言うと、渉の唇が私の唇に重なった。




安心出来る渉の腕の中で、




「渉。これからずっと守ってね。」




そう呟くと、渉が強く抱き締めてくれた。




この日から渉は、私にとって幼馴染みじゃなくて、大切な人になった。

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作者名:紅廉 | 作成日時:2016年3月8日 3時

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