【ky】最終兵器妹2 (ページ32)

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081.ドタキャンってページ32

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　怖くてキヨくんに近づく1歩が進めない子どものわたしが、物理的に1つ大人に近づくタイミングがやってきた。11月23日。私の誕生日だ。いい兄さんの日。最俺には「どこがいい兄さんだ」といつもいじられる。

　日付が変わった瞬間から、SNSで沢山の人が誕生日を祝ってくれている。すごくすごく感慨深い。

　東京に来て親元を離れたから、誕生日を家族で祝う訳ではなくなった。そんなわたしを気遣ってなのか、レトさんが「色々誘っとくからご飯いこう」と言ってくれた。

「あれ、お兄ちゃんは行かないの」

「おう、俺は今日用事あるから断ったし」

　ちょっとおめかしして部屋を出ようとした時に、兄は行かないのだということが判明する。「楽しんでこいよ」と親指を立てる兄に「……ありがとー」と不自然に思いながら家を出た。

　出発すると、歩きながらレトさんに一応確認の電話をする。

「……レトさん、中目黒でいいんだよね？」

『ごめんけど、俺行かねーから』

「はい？」

『でもまあ、楽しんでくれや』

「え、ちょ……」

『安心して、お前は可愛いから』

「…………」

『はっぴーばーすでー』

　楽しそうに電話が切られてしまった。兄も来ないしレトさんも来ない？これは誰もいないのでは？というかなに、あの意味深な発言はと思いながら中目黒駅に向かう。

　そこに立っていたのは、遠目からでもわかる。

「キヨくん？」

「あ」

　わたしの声に軽く手を上げる。キヨくんしかいない。
　キヨくんも自体が呑み込めないと言った顔でわたしを見ている。

「え、レトさんは？」

「行かねーからって……」

「俺とレトさんとAちゃんの3人って聞いてたんだけど」

「……」

　そういうことか。「まあ楽しんでくれや」というレトさんの言葉の意味が今になってわかる。キヨくんと2人きりになるようにセッティングしたのだ、あの人は。

　キヨくんも何かを察したらしく、暫くふたりで見つめ合うと「……2人ってことだよね」とおずおずキヨくんが聞いた。

「……キヨくん、あの、嫌なら別に私……」

「嫌なわけねーじゃん」

　キヨくんはケロッと答える。「なんかレトさんに嵌められたみたいになってんのはムカつくけど」と呟いて、「二人で行くか！」と笑った。

　キヨくんと、2人で過ごす誕生日。
　やり方が無理矢理だけどレトさんがセッティングしてくれたプレゼントに、単純にもわたしは浮き足立っていた。

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