【ky】最終兵器妹2 (ページ29)

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078.大事すぎるからページ29

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「よく食べるね〜」

「なんで着いてくんの」

「わーひどい」

　吉野家で牛丼の大盛りをかきこむ俺を見ながら、あやちゃんは笑っている。Aちゃんとこーすけにあんな場面を目撃された手前、ほいほいと部屋に戻れず吉野家に来たところ、あやちゃんも着いてきた。

　Aちゃん、あれを見てどう思っただろうか。目も合わせてくれなかった。

「妹ちゃん、ショックそうだったねえ」

「……」

「キヨのことほんとに好きなんだねえ」

「……自分の兄貴が女の子と抱き合ってたらキモイのと同じ感覚でしょ」

　俺の言葉にきょとんとこちらを見つめるあやちゃん。綺麗にリップの塗られた口元が、これまた綺麗に弧を描くと、「抱き合ってないよ、わたしが一方的に抱きしめた、でしょ？」と言った。

「それともこれから抱き合いに行く？」

「……そういうのあんまり冗談で言わない方がいいと思うよ」

「本気だよ？」

「本気なら尚更言わない方がいいと思うけど」

　「ケチ」と唇を尖らせる。
　ドキドキしないわけじゃない。こんだけ可愛い子が俺のことを好きだと明言せずとも明らかにそうだと受け取れる言葉を告げてくる。
　でもそれは、Aちゃんに長年抱いてきた所謂愛しいという感情とは違ったものだ。

「キヨって全然女遊びしないよね。こーすけの妹ちゃんのこと好きなの？」

「………………まさか」

「何その間」

　女遊びをしないのは、本気で好きじゃない人とそういうのはどうなのかと潔癖なところがあるのと、自己保身だ。別にAちゃんは関係ない。俺が女遊びしようとしまいとあの子との関係には全く関係ないし。

　あやちゃんは「大事すぎるから自分のものにできないのか」と俺の図星をついてきた。

「自分のものにしたとき、傷つけるのが怖い、関係が終わるのが怖い、大事で大事で綺麗にとっておきたい子なんだね」

「……」

「なのに独占欲は一丁前にあって。他の人に取られたくないと思ってる」

　彼女の言葉が俺の心のやわこい部分にぐさぐさと突き刺さる。あやちゃんは黙り込む俺を見て「かわいいね、キヨ」と笑った。

「取られたくないから玉砕覚悟で告白するのか、取られても構わないからその穴をほかの人で埋めるのか」

「……」

「わたしは別に誰の代わりでもいいよ。キヨと一緒にいられるなら」

「……俺の何がそんなにいいわけ？」

「かっこいいとこかな」

「テキトーすぎん？」

　あやちゃんは「寂しくなったらいつでも呼んでよ」とにっこり笑った。

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