【ky】最終兵器妹2 (ページ26)

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075.私は意気地無しページ26

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　抱きしめたことを後悔するって、つまり脈ナシってことじゃないのか。レトさんは苦笑しながら「俺じゃなくてさ、本人に聞きなよ」と言った。

「それができたら苦労しないってば」

「ほら、来たよ」

　レトさんの言葉に後ろをむくと、キヨくんがキョトンとした顔をしている。もしかして全部聞かれてた？

「レトさんに呼ばれて来たんだけど。何？」

　キヨくんは「あっちー、お茶飲んでいい？」と冷蔵庫を開けた。聞かれていなかったらしく、ほっと胸をなでおろした。

　レトさんは不意に立ち上がって、「これキヨくん忘れてったから、取りに来てもらおうと思ってさ」と上手に誤魔化して、Macの充電器を渡した。

「あっレトさん家にあったんだ」

「Aちゃんもう帰んでしょ？キヨくん送ってあげてよ」

「え」

　絶句してレトさんの方を見るわたし。気を利かせているつもりなのだろう。にっこり笑顔で居た堪れない。キヨくんはすごい勢いで麦茶を飲むと、「Aちゃん、すぐ出れんの？」とわたしに尋ねた。

「……うん」

「じゃあ帰ろうぜ。レトさんありがと〜」

「うん、気をつけてね」

　あっさり帰るキヨくんに慌てて着いていくと、まだ西日がギラっと眩しい。エントランスから外に出ようとする彼に、「待って」と言い日焼け止めを塗り始めた。
　キヨくんは「まだぁ？」と暑そうにTシャツの首元を揺らした。

「待って、この油断がダメなんだよ」

「俺の影に隠れて歩いてていいよ」

「え」

　キヨくんのお言葉に甘えて、キヨくんの影を踏みながら帰る。わたしはキヨくんのすらっとした背中を見つめながらぶつからないようにだけ気をつける。

「キヨくん」

「んー？」

　間延びした声が返ってくる。好きだなぁ。
　1度認めてしまうと、本当にどんな些細なことでも好きが大きくなる。

「ありがとね、DM」

「あぁ、うん。きもいね下心の巣窟って感じで」

　「女の子って大変だよな」とキヨくんは笑った。

「あの、レトさんに聞いたんだけど……禁酒するの？」

「……あー」

　キヨくんは頷くと、前を向いたまま、「安心して、Aちゃんの前では死んでも飲まないから」と続けた。

「ごめんね、キモイ事して」

「キモくない」

「……」

　キヨくんのTシャツの裾を掴んだ。キヨくんの視線を浴びながら、わたしは必死に言葉を続ける。

「キヨくんなら……、嫌じゃない」

「……」

「……な、なあんてね〜」

台無し。ごめん、レトさん。わたしは意気地無しです。

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