椛は今日も。 ページ29
目が覚めて1週間｡
やっと歩けるぐらいになって、銀時に屋上へ連れていってもらった。
「で、そんな怪我人を呼び出すアホなアンタはどういう神経してんのかねぇ？」
「そのアホを突き落として骨をおらせるクソアマはとな細胞で出来てんだろうねぇ？」
「うるせぇよ怪我人ども大人しくしろ。」
一触即発ムードの私と虎を銀時が小突く。
あの時、虎は壱を背負ったまま落ちていった。
運良く木々にぶち当たり、直撃は免れたらしいけど、なかなか骨が折れたらしい。
「……壱は？」
「さぁな、出発の準備でもしてんだろ。
烏は俺が引き取ることになった。」
「へぇ。アテでもあるの？」
「まぁ、大坂の方にな。
元々俺も身を寄せるつもりだったからな。なんとかなるだろ。」
「……そっか。」
足元に置かれた荷物を見る。
既に、準備は出来ていたらしい。
青空に白い雲が一つ。
ぽつんと、ゆっくりと流れていた。
「……ま、今度こそはサヨナラってことだ。」
「まぁ頑張れ。」
「相変わらず励ましのクソッタレもねぇな｡」
.
.
「なぁ、」
「……ん？」
.
「好きだよ。
今も、昔も。」
.
「────それだけだ。
じゃあな。」
.
足元の荷物と、その男は消えた。
一つの余韻を残して。
「A、」
愛する人に呼ばれて、振り向く。
「ん？」
「良いのか、何も言わないで。」
「いいよ、別に。
きっと、虎もその方がいいって思ってる。」
「……そうか。
ま、今は銀さん一筋だもんなぁ？」
「それはどうかな。」
「えっ！？」
「冗談だよ！
銀時の事、大好きだから！」
銀時に抱きつく。ぎゅっと。
銀時もそれに応えてくれる｡
もう離れない｡ずっと。
不安になんてさせない。
────愛してるから────
────────
「A、早く準備しろー｡」
「Aさーん？行きますよー？」
「Aー！置いてくアルヨ！！」
「ワン！」
春が来る。
それでも紅葉前線は到来する。
.
「ごめーん！待ってー！」
.
紅い椛は、今日も紅い。
────Fin────
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MiUmIu(プロフ) - vict tm 0206さん» コメントありがとうございます！今、低更新ですが……なんとか進めていきたいと思っていますのでよろしくお願いします！！ (2017年4月22日 23時) (
レス) id: 042c49640d (このIDを非表示/違反報告)
vict tm 0206(プロフ) - 続きが楽しみです！ (2017年4月22日 14時) (レス) id: 260e4dcf34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2017年4月12日 23時
