染まっていない ページ32
＊
「好きな人作っちゃいけないってなんなん」
「…親友との約束」
「なんで？」
「男はしょうもない生き物」
「…マルも？」
「マルもだし、錦戸も」
「亮」
「なに？」
「錦戸って呼び捨てにしていい人は年上だけ
亮ってよべ」
「…亮」
「…おん」
「そっち向いていい？」
「…どぞ」
亮は天井を見たままで
あたしはそんな亮を見つめる格好になった
「…さっきの性格診断、ハズレじゃないでしょ」
「お前の性格当ててやろうか」
「…あたんないよ、嘘で固めてるから」
「…本当は普通の女子高生になりたいのに
強がることでしか自分を出せなくて
そんな自分をやめたいのに心とは正反対の
ことばかりが口から出て行く
異性よりも友情が強くて当たり前だから
親友を裏切れないけど
裏切ってまでも好き、って人ができてしまって
悩みに悩んでいるのに
口うっさい6人が家にあがりこんで来て
はよ帰れって思ってる」
「…口うっさいとも思ってないし
帰れとも思ってない」
「…きれいな黒髪や」
「自分が？」
「なんで俺が俺を褒めんねん
ただのナルシストやん」
「…あたし？」
「おん」
そう言って亮は顔だけあたしの方を見た
前髪を少し触った
亮だって、きれいな黒髪だ
「…何にも染まってない、きれいな髪やで」
「…そうやって女を落とすの？」
「こんなんで落ちる女はチョロいな(笑)」
ﾄﾝﾄﾝ
「A〜、亮ちゃん来てる〜？」
「こうやってノックしてから来て、次から」
「こういうのはマルだけの方がええやろ」
「…おやすみ」
亮は何も言わず
頭をﾎﾟﾝってして部屋から出て行った
「なんやAのとこおったん？」
「覗いたけど寝てたわ」
「夜も遅いしね〜、さっきはAがごめんね」
マルヤマと亮の声が遠ざかっていく
確かに、嬉しい優しさは
マルヤマだけがいい
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作者名：みくや
| 作成日時：2016年6月11日 5時
