【連作短編集】Candle 【歌い手】

ロリポップ・ガール！【snr】 ページ5

♢

｢おとなり、いーですかっ｣
｢あ、まあ……｣

失礼します〜と隣に腰かけた彼女。ふわふわとした髪を耳の上で二つ結びして、黒いパーカーを羽織って、ロリポップを咥えたなかなか人目を引く風貌である。

｢あ、おにーさん飴いります？｣
｢えっ｣
｢はいどーぞっ｣
｢……ありがとうございます｣



(……あまっ)


それが彼女、Aと名乗った少女との出会いだった。


***

たっぷりミルクを加えたカップに、角砂糖をよっつ落とす。それを口に運ぶ姿を俺はぼんやりと見つめていた。

｢……甘すぎひん？｣
｢ん〜？｣

飲んでみる？なんてカップを差し出した彼女を軽く受け流す。


｢つれないなぁ｣
｢そんなん飲んだら舌もげるわ｣

そのままへらへらとAは笑って俺のカップを覗き込んだ。


｢うわ、真っ黒｣
｢言い方があるやろ言い方が｣
｢え〜、こんなの飲めるの？｣
｢お子ちゃまにはわからんやろ｣

ひどいな〜と彼女はまたへらりと笑う。それからまたカップに口をつけた。

苦めのコーヒーと甘ったるいキャンディー。
彼女と出会ったあの日から、それが俺らの日常になっていた。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す