出会って九日目 ページ10
十四日目、出会ってから二週間が経った。
俺がAを叱った日から少しずつ変化が現れ始めていた。それはどんどんと顕著なものになっていき、そして今日はそのなかでも特に記念すべき日となったのだ。
「A!!」
遠慮もなく扉を全開にして慌ただしく入室すると、本を読んでいたままの姿で固まり、肩を竦めながら怪訝そうな顔で彼女がこちらを見る。
『な、なに』
「手前今日、俺が傍に居ないにも関わらず朝食を食べたらしいじゃねェか。それも全部! 医師が泣いて喜んでたぞ。看護師も包帯を変えるときに嫌な顔をされなくなったと嬉しがってた」
『短期出張から戻って早々そんなこと? ご飯くらい食べるよ、だって食事をするのに一々貴方のことを待っていたら餓死しちゃうじゃない』
「そうだ、その意気だ。それでいい」
四日前から首領の命により東北に遠征に出向いていたため、彼女と顔を合わせたのは三日ぶりのことだった。その間もきちんと食事を取っているのか気がかりだったが、出張一日目の夜に医師から連絡があったときは本当に安心したのだ。
叱られたことが原因か、時間の経過が原因か、はたまたどちらでもあるのかはわからないが、少女は確実に良い方向へと変化を歩み始めている。
それに比例するように俺や立原と過ごす時間が減っているが、以前のように周囲の人間へのあからさまな嫌悪を示すことも少なくなったおかげか、その件について言及して文句を言うこともなくなっていた。
「それからな、聞けよ。今日明日と久々の休暇を貰った」
『へぇ、よかったね』
「だからよォ買い物にでも出ようと思ってるんだが、お前も行くか? 車出すから好きな場所連れて行ってやるよ」
俺の申し出に目を瞬かせたAは、少し悩む素振りを見せてから首をふるふると横に振った。意外な反応に呆気に取られたのはこちらだ。
彼女は文句こそ多いけれど、我儘を言ったことはたったの一度もない。強いて言うなら責任を持ってここに置けと交渉してきたときくらいのものだ。だが外出する機会が与えられれば、真っ先に飛びつくものだと思っていた。
『私はいいよ。まだこの本読み終わってないし』
「それ絵本だろうが。いくら文字を読むのが下手でもさっさと読める」
『下手とか言わないで、好きじゃないだけ』
尚更俺についてくればいいのに。
少女の頑なな意志とその意図が、俺にはどうにも理解出来なかった。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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