出会って十八日目 ページ19
それから一日、二日、三日と過ぎて。ついに出会ってから三十日目になった。季節も巡って大分暑さが目立つようになっていた。
早朝から首領に呼び出しを受けていた俺は、黒服に軽く会釈して重厚な扉を通った先、彼の目の前で脱帽して膝を着きながら頭を垂れた。
「中原、命により参上致しました」
「早くからご苦労様。楽にして構わないよ」
その言葉を合図に立ち上がると、帽子を胸元に抱えて真っ直ぐ男を見据える。座する椅子の後ろから様子を伺うように金髪の少女が覗いていた。俺と目が合ったことに気が付くと、こちらの周りを二度三度回って元の場所へと戻っていた。
奇妙な行動に首を傾げれば、いつもより幾分か優しげな声で首領が話を持ち出す。
「さて中也くん、今日は何の日かな」
「...何の日、ですか」
その問いにすぐには答えることが出来なかった。特別な会談でもあっただろうか、それとも書類の提出期限だっただろうか、まさか抗争の日でもあるまい。
真面目に考えるほど浮かんでくるのは、仕事に関係ない、少女のことばかり。
「難しく考えなくていいよ。今君が考えていることでいい」
黙りこくってしまった自身を諭すように掛けられた言葉にはっとして面を上げると、彼が一般人の振りをするとき名乗るような中年男性の顔があった。何かを探ることも探らせることもない、ただ単純を受け入れさせる笑顔。
「Aのことですか」
「そうだね、彼女のことだ。今日で彼女はポートマフィアの医療機関区域から出て行くという約束だったはずだが。君はどうするつもりだい?」
質問の意図が分からなかった。どうする、と言われても俺は彼奴を元の世界へ無事返してやることしか出来ない。そこに介入するのは俺の意思ではなく、彼奴の...。
彼奴の、なんだ?
「彼女の所へ行って来なさい。まだ、時間はあるだろう」
なんて人だ。誰もが求める答えへの道を的確に提示し、誘導する。こんな所業を息をするように成せる人間を俺はこの世でたった二人しか知らない。
失礼しましたと再度頭を垂れ、足早に医務室へと向かった。
*
「リンタロウってば、本当に回りくどい」
駆け引きをのような長いやり取りに飽き飽きしていたのか、少女が口を尖らせる。その姿に破顔して甘ったるい声を上げる男を気持ち悪いと一蹴して離れていく彼女に、彼は言う。
「普段の私であれば絶対に許可をしない案件だからね、多めに見ておくれ」
しょうがないわねと鈴の鳴るような声が響いた。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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