名前のない家族 【文豪ストレイドッグス】

はじめまして ページ1

あ、また言ってる。

「あの子まだいろんな家転々としてるの？」
「そろそろ誰か引き取ってあげなさいよ」
「無茶言わないで！ まだチビが二人もいるのよ」
「うちだってやっと全員巣立ったんだ」

私の言葉なんか無視して、勝手にみんなが喧嘩する。
それ誰のための喧嘩？ 貴方達に必要な喧嘩？

耳が痛い。

「孤児院とかじゃダメなの？」
「アタシら引き取り手があるって理由で預けられない」
「いっそ一人で生活でもしてくれないかねぇ」
「あの歳じゃ身体売ったって無理よ」
「そもそも売れそうにないがな」
「しっ！ 聞こえるわよ！」

心が痛い。

「じゃあもう、彼処しかないわね」

そうして追いやられた遠縁の家で私は一生消えない傷を負った。

「俺の仕事のためだ。これくらいの役には立てよ」

腹部に感じる強烈な痛み、違和感、不快感。
もう痛くないところなんてない。

神様って、みんなに平等じゃないのね。
そう思って諦めていた。


「手前、生き残りか？」

貴方に会うまでは。

『神様...？』

私にとっての神様は案外手の届く距離にいるものだった。

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