○△□ ページ3
静まり返った室内に、こくりと嚥下の音が響く。
「それで、望みは何かな」
『......』
中原中也との取引は無事に成功した。内容は、持っている有益な情報を差し出すことを条件にポートマフィア首領に謁見したいというものだ。彼は話を聞いて少し考えた後、すぐさま約束を取りつけてくれた。
「謁見とはいうが、まさか会って世間話がしたい訳ではないのだろう? そちらが提示してくれた情報開示の意志に沿って、こちらも何か手を尽くさなければね」
『話がわかる方で助かります』
では、と口を開く。路地裏で会った時とは見違えるほど印象ががらりと変わって、落ち着き払った様子に、中原にも自然と緊張が走る。
そして次の瞬間私は、
土下座していた。
『迷惑は決してかけないとお約束するので三日間だけ! 中原中也さんのことを見続けたいです!!!! お願いします!』
「...は?」
「え?」
あの落ち着き払った知的な彼女は何処に行ったのか、先程とはまた違う印象の変わりようと、あまりの剣幕とお願いの内容に戸惑いを隠せない中原が間抜けな声を出す。続いて森も。
そんな二人など眼中にない、正確には二人の反応など眼中にないかのように、少女は頭をめり込むほど床に着け、お願いしますと呪文のように唱え続けながら猛スピードで床を這って森へと近づいていく。
「待って待って待って! ちょ、言い分はわかったよ。わかったから。とりあえず止まってくれる?! 怖い、怖すぎるから!!」
一同のドン引き故に氷点下まで下がった場の空気にようやっと面を上げた女子高校生。引き攣った顔と情けない声で、中原が恐る恐る声をかけた。
「て、手前どういうつもりだ」
その問いに意味がわからないと顔を顰めて、私は言い放つ。
『はい? 見てわからないんですか。どう見ても自尊心も矜恃も高そうな思春期真っ只中女子高生が無様に地面に頭擦り付けて懇願するほど、あなたのことが好きなんです!!』
「はっはぁあああア?!!」
絶叫する中原を他所に森はふむと考え込む振りをして、
やがて当たり前のようにいいだろうと快諾した。
「その代わり、期限は四日としよう。一日目はエリスちゃんと遊んでくれるかい? 君に興味があるみたいなんだ」
『え...私で、いいんですか?』
少し困ったような顔をすると、天使のような金髪の巻き髪と青い瞳を持った小さな少女が、遊びましょと飛びついてくる。その純粋無垢な目に、ぐっと口を噤んだ。
『わかりました。では四日後、情報をお渡しします』
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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
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