愛の始まり ページ1
「じゃーね、A。あとでプリ送るわ」
『よろしくー。また明日ね』
友人と別れて俯きながら帰路を行く。秋の少し肌寒い風が頬を撫で、スカートと脚の間をすり抜けていく。通学鞄と同様に、その足取りは酷く重かった。
また今日も、ダメだったなあ。
きっと一生そうなのだ。十六年という短い人生の中で誰も理解してはくれなかった、気付いてはくれなかった。それはおそらく、明日も明後日も、来週も来年も再来年もその先も。
私の努力を愛してはくれないこの世界で、
私が誰かと愛を共有することは叶わないのだ。
大きく、全てを攫う風が吹いたような気がする。
ぼーっとしたままひたすらに歩いていた。前を見ているのか左右を見ているのか上下を見ているのかすらわからず、重い足を重いなりに、ゆっくりと動かしていたことだけは覚えている。
気が付いたら、そこは見知らぬ街だった。
『は?』
ここ、どこ。
いつの間にか人通りがとても多い場所に出ていた。いや、いくら歩いたからってこんな街は近辺になかったはずだし、そもそも私はそんなに歩いただろうか?
変な顔をして立ち尽くす私に、通りがかる人々が訝しげな視線を寄越しながら過ぎ去っていく。混乱した頭は上手く働かなかったが、この状況があまり良くないことだけは自ずと悟った。
とりあえずは歩きだそうとまた足を踏み出して、今度はしっかり前左右を見ながら進む。そして丁度よく見つけた路地にさっと身を入れた。
とにかく落ち着こう。帰り方は分からないけど、スマホを見ればどうにかなるはずだし、お金はあるから駅でも見つければ帰れる。
ふうと一息着いた私は、そこでようやく自身の感覚が戻ってきたことを知った。人は慌てると視野が狭まり、嗅覚や聴覚に至るまで正常に機能しなくなる。目に入らない他人の視線にも鈍い。
路地に入って三分ほど。
突き刺さるような視線に射止められていることに気づいてしまって、よく聞けばべちゃべちゃと嫌な音が聞こえて、鼻をすんと鳴らせば異臭が漂っていて。ゆうっくりと振り向き、正体を確かめる。
「貴様、見たな?」
『うぁ...て、あ?!』
そこには予想を裏切らない人のようなもの。
そして白黒の細長い人影。
私は、明らかにその人影に見覚えがあった。
『ぽぽ、ポートマフィア、の?』
私は幻でも見ているのだろうか。とうとう拗らせて、頭がおかしくなってしまったのか。
ここがヨコハマだとは、よもや夢に違いない...と思いたい。
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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
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