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第八話 ページ8






 私が褒めると、「えへへ」とさぞ嬉しそうに頬を染めた。


 「ノーク、僕も聞いたことくらいあるし、何なら常識だよ。それくらいでは自慢にはならないよ」

 「いいじゃん!」

 「まあ良い、だが。ウーファスは厄介だな」

 「厄介、ですか」

 「ああ。ウーファスは中立的立場から観る、と言っていたが、中立だからこそだ。人間を誑かすことも、悪魔側に加担することも出来る。しかし、味方をするわけでも敵対する訳でもない、と言っていた」

 「そんな……彼は、何をする気なんでしょうね?」

 「さあな。私とて、あの堕天使の思うことはいつも分からない。腹の中がみえたことはないな」

 「……彼は、他に何か言っていましたか?」


 クアルスは水晶玉に移るウーファスを見つめながら聞いた。


 「【始まりの鐘(アルケー・グイロ)】が鳴ると、そう言っていた」

 「【始まりの鐘】? なんですか、それ」

 「僕は聞いたことありますよ、『アルケー・グイロ』。僕の弟が、シトスが音楽を司る天使なのでね」


 シトス――ムーシトゥス、か。彼は美しい天使でクアルスの弟。

 そして音楽を司る天使、神からは地獄を見廻るお役目を担っていたはずだ。


 「『アルケー・グイロ』とはその名の通り、始まりを報せる鐘ですが、鐘とは名ばかりで実際はただのラッパの音のことです。地上では終焉を報せるラッパとも呼ばれているそうですが」


 ムーシトゥスの兄と言うこともあるのか物知りなクアルスがそう説明した。


 「へー! それは知らなかったな」

 「ふふん! 僕の方が一つ上手だったようだね!」


  ノークニックとクアルスの可愛らしい会話を耳にしつつ、私は嫌な予感がよぎった。


 「……ムーシトゥス、無事だろうか?」


 だがその嫌な予感や不安はクアルスの一言によって打ち砕かれた。


 「無事ですよ天使長様。先程、水晶玉でも見ることが出来ましたし、しっかり連絡も取り合えましたから!」

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作者名:赤間 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年5月18日 17時

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