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第六話 ページ6






 「あ、悪魔!?」

 「そうだ。伝えろ、そしてここに来い、とな」

 「し、承知いたしました!」

 「往け、人間。神のご加護のあらんことを」


 男は怯えながらも、走り去っていった。


 神殿跡地前に取り残されたサマエル――ウーファスは、走り去る男の背中を見つめていた。


 「……【始まりの鐘(アルケー・グイロ)】が鳴る。もうすぐだ」



  *



  靜かだ。

 鳥の囀る声や天使たちの話し声がいつもなら聞こえてくるはずだったが、今日はやけに静かだ。


 書斎から出て、廊下を歩き続けると、開けた場所に出る。

 中庭だ。

 低階級の天使たちがここで遊んでいたり、掃除をしていたり、花壇の手入れをしていたりする場所。

 だが、今日はそんな天使さえ一人もいなかった。

 何かが起こる前兆かもしれない、私はそう悟った。


 中庭を過ぎると、大きな扉が姿を現す。

 コンコン、とノックをし、扉を開けて中に入る。

 そこは書斎とはまた違い、多くのジャンルの本を取り揃えた図書館だった。


 先刻、書斎に走り込んできたノークニックが高い本棚に手を伸ばしているのを見つけた。

 ノークニックは私に気付き、ぱあっと顔が明るくなったかと思うと、姿勢を正した。


 「天使長様! どうなさいましたか?」

 「ノークニック、変わりないか?」

 「はい! 先程の騒動は解決いたしました! ですが……」

 「なんだ?」


 ノークニックは俯き、言葉に詰まった様子だ。


 「えっと……はい。クアルス様が、先程から何やら暗いような気がしまして」


 クアルスは死を司る天使であり、七大天使の一人。

 常に水晶玉を用いて地上の様子を窺っているが。

 ノークニックが見た方に目を遣ると、クアルスが机に向かって何やらうなっているようだった。

 手元には例の水晶玉が置かれていた。


 「うーん……」

 「クアルス」

 「て、天使長様……」

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作者名:赤間 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年5月18日 17時

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