6）お菓子と子供たち ページ7
「お嬢ちゃん、辛いのは平気かい？」
「えぇ、好きです」
「織田作ちゃんは辛党でねぇ、同じものでいいかい？」
「えぇ、織田さんのオススメを下さい」
カウンターに座り、親父さんを交えて会話を楽しんでいるうちに、カレーが出来上がる
「あら、美味しい」
「だろう？」
「美人さんに褒められると、やっぱりうれしいねぇ」
カレーを食べ終わった頃、Aは思い出したように紙袋を織田に差し出した
「これよかったらどうぞ」
「これは？」
「昨日焼いたお菓子です。あんなにお菓子を買っていたので、お子さんがいるのかと」
「あぁ、ありがとう、孤児を養っているんだ」
「そうでしたか・・・もしかして」
ちらっと後ろを見る
「先程から覗いているあの子達かしら？」
「え？」
バッと振り向けば、五人の子供
「こら、お前たち」
「げっ！見つかった！」
「織田作が彼女連れてきた！！」
「違う！」
「ふふふっ」
「賑やかそうね」と綺麗に笑うAだった
それに親父さんが「毎日がお祭り騒ぎだ」と笑った
「織田作さん、それなぁに？」
「あぁ、あのお姉さんが作ってきてくれたお菓子だ。お前たちにって。お礼を言ってこい」
「わぁ！美味しそうなクッキー！！お姉さん！ありがとうございます！」
丁度外に出てきたAは頬笑む
「どういたしまして」
「ありがとう！お姉さん！」
喜んでクッキーを食べ始める子供たち
「・・・もしかして、先の抗争の？」
「あぁ、放っておけなくてな」
「優しいのね、貴方は」
「そうだろうか」
Aはポケットに入っていた懐中時計を見る
「もうこんな時間、そろそろお暇するわね」
「えぇー、お姉さん、もう行っちゃうのー？」
「こら、夏目さんも忙しいんだから」
「ふふっ、また遊びに来るわ。お菓子も一緒にね」
「やったー！絶対だぞ！？」
「約束！」
「えぇ、約束するわ」
子供たちの頭を撫で、Aは織田を見る
「いいかしら？」
「あぁ、いつでも来てくれ」
「ありがとう、それではまた」
歩いていく彼女を見送る
「(また、会える)」
内心、嬉しかった織田作だった
歩いていくAは彼らからその姿が見えなくなった頃、携帯電話を取り出す
「(困ったなぁ・・・“あの子”が珍しく誉めるから、どんな人か見に来ただけだったんだけど)」
暗号化されたメールが来ていた
「(織田 作之助、か・・・)」
どうしようか、と悩みを口にしながらも、その表情は楽しそうだった
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作者名：水琴 | 作成日時：2019年4月16日 7時
