[銀魂]覚えていてね。[坂田銀時]

正体不明の ページ40

side Gintoki


＿＿＿＿腹立つ、ムカつく。

俺の目の前でお咲に抱きつく沖田くんも、満更でもないような顔で抱き締め返しているお咲も。


何なのこいつら、俺への当て付けかなんか？

すっごい腹立つんですけど。なに？


けど俺は、何でこんな感情を持っているのだろうか。

俺の恋人は夢香であって、《お咲ではない》のに。

俺は、この感情を知っている筈だ。

けどその言葉を口に出してしまえば自分に歯止めが聞かなくなってしまいそうでわざと知らないふりをする。



この感情は、一人の女からよく教わった。…と思う。

なんで曖昧かって？…それは、俺にも良くわかんねーよ。

ただ、記憶がどっか抜けてる気がするのは確かだ。

俺が愛した女は夢香だけ。

たった1人だけのはずなのに、時々夢に出てくる女がいる。俺は、そいつの隣でただただ下らない話をして笑っている。そんだけの夢。

いつもの俺なら、どうでもいいとすぐに忘れるはずなのに、その夢だけは変に頭の中に残っていた。

…ただ、一つだけ疑問がある。

俺の夢に出てくるその女は、顔も名前もわからない。とても優しい声色で俺の名前を呼んでくれるのだ。

その女が、俺にとってどんな存在なのか。

夢に出てくるくらいの奴なのにどうして俺は思い出せないんだ？


俺は小さく舌打ちをすると、今まで考えていたことを全部やめて立ち上がった。

｢んじゃーな、お咲。｣

｢え、坂田さん？もう行かれるんですか？｣

｢おう。あと、その呼び方やめろ。銀時でいーぜ。｣


＿＿＿＿帰り際、何故こんなことを言ったのか自分でも分からなかった。

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