花子くん。 ページ1
『攫っちゃえ』
「本当は欲しいくせに、攫っちゃえよ」
うるさい。
目の前でトイレ掃除をするミカミを目で追いつつ、頭の中で木霊するその声をかき消すように急いで目を逸らす。
「手に入らないなら壊しちゃえよ」
まるで悪魔の囁きだ。
俺、何もしてないのに。……。そんなのウソ、ほんとーは欲望を我慢してる羊の皮を被った狼だから。
「花子くん、大丈夫？」
大きな目を細めて心配そうに俺を見るミカミを見て、心臓が波打つ。
あはは…、せっかく俺が留めてたの何の意味もなくなるじゃん。
「………ダイジョーブ、ダイジョーブ」
不思議そうな顔をしてまた掃除をし始めたミカミの揺れたままの髪を見つめる。
控えめな金髪のその髪は夕焼けを背景に溶けそうだった。毛先が赤色みたいになってて軽いグラデーションですっごく、キレイ。
「よしっ、…あ、もう帰らなくちゃ」
俺が見ていた夕焼けをミカミも見つめて時間の流れを悟る。
まだ、帰らないで。俺と一緒にいよう？
そう言う前に最初から行動は決まっていた。
「は、はなこくっ、！」
そっと後ろから抱きしめて存在を確かめる。
思わず、首に手をかけた。
「どうしたの？」
困惑したミカミの声がすぐそばで聴こえる。
いつでも、こんなそばにいてくれたらいいのに。だったら、俺がこんな思いをする必要もミカミが攫われなくて済むのに。
「ねぇ、」
「…うん」
「もうちょっとだけ、…もうちょっとだけ一緒にいて？俺、ミカミが帰っちゃったらすっごいサミシー」
ただ縋った。
ミカミがうんって言って笑ってくれて、もうちょっとだけ一緒にいてくれることを。
「いいよ。
花子くんにはいつも助けて貰ってるんだもん、それぐらい全然平気！」
ミカミは俺のことを思って配慮してくれただけ。なのに、俺の思い通りになってるって期待しちゃう。
気づかれないようにそっと髪の毛に口付けをして、霊力を流し込む。
いつか、その綺麗な金の髪色も俺の色に染まっちゃえばいいのに。淡い翠の瞳の色だって、この夕焼け色にさ。
「ミカミはさ、神様って信じる？」
顔を覗き込むようにして問いかける。
近くなった顔の距離に特に気にする様子もなくミカミは数秒考えてまた口を開いた。
「いる、んじゃないかな…？あんまり知らないけど」
「…はは、ダヨネー」
もしも、もしも俺が神様ならきっとミカミのことをホントに攫っちゃって隠しちゃうかもね。
神隠し、みたいに。
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ろい(プロフ) - さくらさん» ありがたい言葉です！すっごく嬉しいです、これからも更新頑張ります！！ (2020年3月10日 23時) (
レス) id: 9883bc7676 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 長々と書いてしまいそうなのでまとめて、文章が凄い好きです！更新頑張ってください！ (2020年2月29日 23時) (レス) id: f3613561c3 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - みわさん» 司くんを書くといつもこうなっちゃいます……、、完全に私好みです、すいません (2020年2月17日 1時) (レス) id: 9883bc7676 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 月ヶ瀬@猫さん» コメントありがとうございます！頑張りますー！ (2020年2月17日 1時) (レス) id: 9883bc7676 (このIDを非表示/違反報告)
みわ - 司くんえちえちですね、、すきです (2020年2月16日 22時) (レス) id: 5664b5d869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろい
| 作成日時：2020年2月15日 20時
