BTSの長男の日常短編集 (ページ41)

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命日　2 ページ41

みんなが僕を救ってくれたんだ。入所したての頃はできなかったダンスも3ヵ月したらジミナに少し劣る程度までできるようになった。でも僕をうらやましがったり妬んだりせず「すごい!」ってほめて認めてくれたのはみんなだけだった。

もしかしたら心の中にはそういう気持ちもあったのかもしれない。けどそれでも｢ヒョン!ヒョン!」って親鳥についてくる雛鳥のようについてまわってくる弟達がかわいくて、こんなにも僕の心をあたためてくれるみんなを絶対守ると誓ったんだ。

だから僕はリーダーにならなかった。ナムジュナには最年長だしみんなが慕っているからと最後の最後まで僕をリーダーにしようとしていたが、僕はみんなの心を守る方に専念したかった。ナムジュナはカリスマ性があって頭もいいから外部からの攻撃を守れると思ったからじゃあ僕は内部から守ろうってね。

けど少し疲れた。いつまでたっても売れない日々。まだデビューしてから1年ちょっとだから仕方ないのかもしれない。けれども寄せられる声はいいものだけではなくみんな疲弊していた。せめて僕だけは折れるわけにはいかないと思っていたけどこの日が来て折れかけている。

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ベッドに横になっても疲れているはずなのに寝れない。誰かの顔を見れば少しは気分が晴れるかもしいないが生憎の一人部屋で、しかたがないから外の空気を吸おうと部屋を静かに出る。リビングにつくとここに来たばかりのことを思い出した。足の踏み場もないほど汚なかった部屋。それをきれいしたのは僕だがなんか寂しい。片付けなければよかったかなとふと思ったが、衛生的によくないとその考えを消す。

ベランダに出た。今宵は満月だった。ベランダの手すりに右ひじをついてよりかかって月を見る。月は相も変わらずきれいだ。僕は何も考えずにただ月を眺めていた。しばらくすると僕は無性に寂しくなった。現実では僕の気持ちに関係なく時間は進んでいるのに僕は何1つ進めていない。僕は過去から1歩も動けていない。あの時から何1つ成長できていないなんて、なんて情けないんだろう。なんて弱いんだろう。こんな自分が嫌になる。

気づけば涙が出ていた。両親の葬式でさえでなかった涙が出てきた。ああ、こんなにも僕は弱くなったのか。僕は涙をぬぐうことなくただただ月を眺めた。