標的28‐2 ＊あの人と ページ4
「精神に限界がきている」と、何故あの女がここにいるのか問い詰めたオレへ紫苑はそう返した。
「病んだ精神には生すら負担だったらしい。数年前に偶然見つけてから、病気なのだと言いくるめてここに入院させた。記憶の退行、視力の低下。彼女にとって、ボンゴレの息子だと信じた君はまだ生まれたばかりの赤ん坊でしかない」
淡々と言葉を紡ぐ紫苑の言葉を、オレは白い壁に寄り掛かって聞いていた。正直どうとも思わなかった。このオレを疎んだ報いだ、ざまあみろとすら思った。
そんなオレの感情を読み取ったのだろう。紫苑は顔を曇らせながらも再び口を開いた。
「君にとってこの行いは不服だろう。裏切りととられても文句は言えまい。ただ俺が、そうしたいと思っただけなんだ。
君が彼女を憎んだことは知っている。正直俺も未だ彼女の行いには嫌悪する。けれど、けれど彼女は君を生んだ。我が王をこの世に産み落としてくれた。俺は……君に逢えた全てが輝かしいものだと思えてならない。この奇跡に感謝したい。
人の縁とは儚いものだ。断ってもいい。彼女を殺しても文句は言えん。……でも、どうか」
腹を見せる獣のように紫苑は降伏の意を示している。しょんぼりと落ち込む様子を見せるこいつにぶん殴る気も起きなかった。
ただモヤモヤとした不快感がある。誰に対してかは言うまでもないが、こいつの言動の何に対してかは自分でも理解できなかった。
ただ酷く、酷く苛立った。こいつが他のカス共に向ける情の全てが憎らしいと、そう思った。
「ふふ、お話は終わったの？」
結局、オレは忌々しいあの女の病室へもう一度足を踏み入れていた。
やつれた頬を上げて微笑む女はもって数日、早くて今日にでも死にそうなツラをしていた。
こんな弱い奴に、オレは人生を狂わされたのだ。
「ありがとう。ここに来てくれる人はさっきの子ぐらいだから、ちょっと寂しかったの」
今まで生き延びていたのがおかしかったのだ。
紫苑の慈悲が生かしていたとはいえ、もうその必要はない。
今ここで殺してしまえば────……
風で大きく靡いたカーテンに気を取られた女に、手を伸ばす。
憤怒の炎が──この女を狂わせた炎が──パチリと火花を散らした。
「……窓は閉めろ。風邪をひくと体に障る」
そんなオレの殺意とは裏腹に、オレの手はカーテンを靡かせていた窓を閉めた。
不思議そうに見上げる女の瞳を、無感動に見返す。今ここでこの女を殺さないのには、理由があった。
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misyou.go2(プロフ) - 桜さん» 最後にどんでん返しは王道ですよねっ(笑)応援ありがとうございます (2017年12月25日 18時) (
レス) id: ffd771d2d5 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - クリスマス最後が一種のホラーになりましたね……ｗ なんて恐ろしい……。これからも応援してます！ (2017年12月25日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：misyou.go2 | 作成日時：2017年10月31日 20時
