第一話 なんでオレが ページ2
それは、いつもと比べて闇の密度が濃い夜のことだった。
空はきれいさっぱり澄んでいるのに、なぜか星は見えない。
太陽のいなくなった空に、堂々と満月が居座っている。
人々が寝静まった夜中、月明かりに照らされぽっかりととある神社が浮かび上がっていた。
「やだ！ やだやだやだ！ なんでオレが！」
朔夜が叫ぶと、群れのリーダーはため息を吐くかわりにのどの奥で小さく唸った。
「お前だってれっきとした妖狐だろう。人に化けるくらい、余裕じゃないか」
「そう言う問題じゃない！」
朔夜は我慢できないといった口調でつかみかかるように怒鳴り、リーダーをきつく睨み付けた。
朔夜は狐だ。
それも、様々な動物に化けて人を騙し、物を奪い取る妖狐である。
目は猫よりも鋭く突き刺さり、耳は犬よりもずっと大きく先端がとがっている。
鼻は不気味に高く、体のサイズも狼に匹敵する。
そして、豊かな毛並の美しい尻尾が、揺れ動くたびにきらきらと輝いていた。
「なんだよ突然、人間の学校に行けなんてさ」
そう小さく呟くと、木の陰や鳥居の下で朔夜の観察をしていた他の狐たちが、大声でゲラゲラと
大笑いし始めた。
朔夜の所属している群れのメンバーたちが、あざ笑うような皮肉の笑い声を、わざと朔夜に聞かせているのだ。
朔夜は短く舌打ちする。
「いくらあんたが偉い立場にいるっつっても、オレは絶対あんたの言うことを聞かない。どうせまた、いつもの嫌がらせの類だろ？」
群れのメンバーたちを横目で見ながら、朔夜はフンと鼻をならした。
しかし、リーダーは淡々と朔夜に告げる。
「私は本気でお前に人間の学校に行けと言っている」
「やだって言ってるだろ！？ 何で分かんないんだよ！ しかも、なんでよりによってオレなんだ！ 代わりは山ほどいるじゃんか！」
朔夜をからかって笑っていた群れのメンバーらが、慌てて物陰に身を隠す。
他の狐も朔夜同様、人間と共に暮らす生活など真っ平御免なのだ。
「オレが他の奴らとちょっと違うからって、サイテーだな！ ふざけんなよ！」
「他の奴らと違うからこそ、お前に学校へ行ってもらいたい」
「意味分かんねーよ！」
朔夜は怒りを発したように猛然と唸った。
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凍夢(プロフ) - おもしろいです！続きがきになるので続きをお願いします (2018年7月17日 0時) (
レス) id: 00e413b96f (このIDを非表示/違反報告)
アナナス - 面白いです、続き待ってます。 (2017年7月4日 16時) (レス) id: c0c87a14c1 (このIDを非表示/違反報告)
闇風ヤク@アニオタ重症(プロフ) - 面白いw更新楽しみにしてる！！☆*:.｡. o(≧▽≦)o .｡.:*☆ (2014年8月10日 14時) (レス) id: a55c4f8740 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - なかなかです。続きが気になります頑張って下さい。 (2014年6月22日 18時) (レス) id: baa4070149 (このIDを非表示/違反報告)
ルーナレシア(プロフ) - これ面白すぎる(＞∀＜)こういうの好きなんですよ〜♪続きが楽しみです！！ (2014年6月21日 9時) (レス) id: 107d52b62e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aru | 作成日時：2014年5月27日 23時
